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  3. DXを成功させる経営者とは?意識改革に必要な5つのキーワード

中小企業のDX推進にあたって、担当者任せ、ベンダー任せにしていませんか。DXを成功に導くには、経営者の意識改革とリーダーシップが必要です。企業のデジタル化が進まない要因を整理するとともに、変革のために必要な経営者のマインドセット、意識改革のポイントを5つの視点から考察します。

中小企業でDXが進まない要因は経営者にある?

DXは企業全体に関わる変革ですが、自社の各部門においてとらえ方が異なります。いわゆる改革に対する温度差がある場合が多いものです。

たとえば、ITを担う情報システム部門と業務を遂行する部門では、意識のずれが生じます。IT部門が最先端のDX実現をめざしていたとしても、営業部門は日々の営業目標の達成が優先です。忙しい業務に加えてDXのための作業が加わることは煩雑であり、非協力的になりやすい傾向があります。

部門間の認識が異なる上に、経営者、役員、管理職が積極的ではない場合には、DX推進が停滞します。日常的な課題に追われて、DXを後回しになりがちです。管理者の技術理解が足りないと、ベンダーからの提案に対して可能性より不安を強く感じてしまうことから、改革に対する取り組みに対しても消極的になります。

DX推進の停滞を経営者やリーダーが「他人ごと」として考えていると、DXの実現は困難です。

中小企業でDXが進まない理由、課題とは

ここで、中小企業がDXを推進する際の課題に目を向けてみましょう。独立行政法人 中小企業基盤整備機構の令和4年5月発表の調査(最終版)では、DXが進展しない理由を挙げています。上位20%以上の課題を抽出します。

  • DXに関わる人材が足りない 31.1%
  • ITに関わる人材が足りない 24.9%
  • 具体的な効果や成果が見えない 24.1% 
  • 予算の確保が難しい 22.9%

参考:「中小企業のDX推進に関する調査」独立行政法人 中小企業基盤整備機構(PDF)

人材不足は中小企業における最大の課題ですが、この調査結果からもDXとITの人材不足がトップを占めています。DXを推進するにはITに関する理解は基盤として、ビジネスや経営的な視座から自社全体の進むべき方向を戦略的にとらえる視点が求められます。こうした構想ができる優秀なIT人材は、大企業でも確保することが難しいといえるでしょう。

また、「具体的な効果や成果が見えない」と「予算の確保が難しい」という2つの課題は連動していると考えられます。DX推進にあたっては数値的な指標が必要です。DXはあらゆる業務や事業を変革する可能性を秘めているため、自社のビジネスと合わせてフォーカスする範囲を決め、費用対効果を数値指標で測定しなければなりません。漠然とデジタル化を進めるのではなく、DXの効果や成果の見える化が求められます。

ヒト、モノ、カネ、情報を動かすのは経営者

当然ではありますが、企業の経営資源であるヒト、モノ、カネ、情報を統合的にマネジメントするのは経営者の役割です。設備と人材に対する投資、情報の把握、そして効率化によってコスト削減などの効果を出すDXは、ヒト、モノ、カネ、情報のすべてに関わります。したがって、DXの舵取りには経営者の判断と意思決定が重要です。

DXを推進する経営者に必要な5つのキーワード

自社のDXが停滞していると感じるなら、まず経営者が変わることです。経営者の意識変革がDX推進を成功に導きます。では、経営者としてどのような考え方を持てばよいのでしょうか?

企業のミッションを具体的に遂行するのは現場ですが、経営者には、全体を見渡した戦略と企業全体の向かうべき方向性の決定が求められます。その決定として必要になるのは、DXを推進するときの経営者マインド(心構え、意識)です。

DXでリーダーシップを取るときに必要な経営者マインドのヒントを、5つのキーワードから紹介します。

アンラーニング

アンラーニング(unlearning)は、これまで学んだ知識のうち不要なものを捨てて、新たな知識を取り入れ、みずからをアップデートすることです。「学びほぐし」「学習棄却」とも呼ばれます。一般的に学習するときには知識を増やしていきますが、アンラーニングでは陳腐化した知識に対する執着を捨て、新しい価値観のもとに新たな知識を吸収して柔軟に変化に適応します。

あらゆるものを蓄積していくと、蓄積した過去の実績に身動きが取れなくなります。中小企業の強みはフットワークのよさであり、使えなくなった古い知識を捨てることで機動性を高めることができます。

いまAIがめざましい進化を遂げています。変化が激しい時代には、過去の経験や価値観にしがみついていることがリスクになる場合がある。思い切って古い知識を捨てて、積極的に新しい技術を取り入れてはいかがでしょうか。

選択と集中

アンラーニングを経営者に分かりやすく言い換えれば「選択と集中」。P・F・ドラッカーが『経営者の条件』で述べている言葉でもあり、経営者には馴染み深い考え方かもしれません。「生産的でなくなった過去のものを捨てること」が大切です。

DXは幅広い領域をカバーしますが、自社にとって最大の効果を挙げる分野を選択して、そこに集中投資します。コーポレートサイトの拡充、リモートワークでオンライン会議を実施することは、あらゆる企業で当たり前になりました。もちろん自社が遅れを取っている領域に注力することも大切ですが、どの領域で独自性を出すかを明確にします。

データドリブン経営

しかしながら「アンラーニング、選択と集中をどこから始めたらいいのか?」という疑問が生じるかもしれません。この解決のヒントとして、データドリブン経営があります。勘や経験などに頼りがちな経営を、データ主導に変えてみてはいかがでしょうか。もちろんすべてデータに依存するというわけではありません。

まずは企業にどのようなデータがあるのか把握する。活用されていないが重要なデータを発見する。ただし、データの発掘に時間をかけすぎるのは問題。業界全体のマクロの視点、現場のミクロの視点による見解を参考にしながら、経営者自身がどの領域のデータを見直すか判断する。

戦略的メタ思考

企業内のデータ活用、ペーパーレス、テレワークのための環境整備などの具体的なデジタル化も大切ですが、あまりにも現場の変革にこだわりすぎると全体を見失います。経営者には戦略的メタ思考が必要です。短期的、長期的に自社がめざすビジョンを明確にして、自社の競争力を高めて差別化をして、大局的な構想と現場の変革をしっかり結びつけます。

このとき、本質的に考えることが大切です。本質的に考えるためには、全体を見渡した上で部分をとらえ直します。たとえば、ブロックチェーンのような金融向けの技術を応用して、食品のトレーサビリティを行う仕組みが追求されるようになりました。こうした動向は業界独自であるとともに、業界を横断して進展しています。 「この先端技術の本質的な解決は何だろうか」という問題意識によって、DXに対する考え方を変えられます。

本質的なトランスフォーメーション

DXは「デジタル・トランスフォーメーション」の略ですが、企業の変革(トランスメーション)の本質を見直すことが大切です。業務効率化にとどまらず、新規ビジネスの創出や硬直した古い企業風土を刷新して長期的なビジョンを示すアクティブな変革もあります。このように本質的な変革を見据えた上で「その変革に対して、どのようなテクノロジーが必要か?」を問い直します。

経営者が意識改革をするための3つのアクション

DXを成功させるためには、経営者が自社のDXに対する取り組みを宣言し、日々の行動を変えることによって、経営陣や社員をDX推進に巻き込んでいきます。具体的には以下の3つのアクションを習慣的に行うことをおすすめします。

最新の技術動向を常にウォッチする

まず最も基本的ではありますが、ITに関するニュースのウォッチを習慣づけるとよいでしょう。日々情報が刷新されていますが、概要を把握します。このときに、人工知能、ブロックチェーンなど重要なキーワードから動向を追いかけることがポイントです。というのは、変化の流れからつかめるからです。

ChatGPTの進化により、人工知能関連は今後のビジネス全体に大きな影響を与えることが予測されています。毎日のように新たな情報が更新されていますが、基本的な解説や情報をまとめたポータルサイトを利用すると、効率的に情報を収集できます。

自社の商品やサービスとデジタルの関連性に注目する

全体の動向を踏まえた上で、自社に関連しそうな情報に絞り込んでさらに理解を深めていきます。「その先端技術の変化に対して、自社がすべきアクションはあるか?」「自社の商品やサービスにどのような影響を与えるか?」と考えることが大切です。

経営者なりの当事者意識を持って情報の取捨選択を行うとよいでしょう。情報の変化を追いかけすぎて、事業の方向性が揺らいでしまうことは問題です。また、あまりにも急激な変革を行おうとすると現場に大きな負荷を与えます。As is(現状の把握)があってこそのTo be(理想の追求)であり、地に足のついたDXから始めることが成功のコツです。

社員との対話の機会を設ける

従業員の現場におけるデジタル化の課題は「Excel作業に時間がかかっている」場合も十分にあり得ます。こうした問題解決もおろそかにはできません。ところが、従来からのワークフローと密接に関わっているため、先端技術だけで解決できるわけではない点が悩ましいのではないでしょうか。複数のSaaSを導入して現場が混乱し、使い方の習得に時間がかかるなど、かえって生産性を低下させることもあります。

経営者としては理想と現実のギャップにもどかしく感じるかもしれませんが、社員と対話の機会を設けて、それぞれの要望や意見を収集します。現場を動かさなければ会社全体のDX推進は難しいと心得るべきです。

まとめ

中小企業のDX推進では、経営者のDXに対する意識の低さが停滞させる要因になっている場合が少なくありません。担当者やベンダー任せにするのではなく、経営者自身が先端技術や業界の動向に意識を向け、当事者意識を持った上でDXを主導していくことが大切です。そのためには、まずアンラーニングを意識してはいかがでしょうか。自社にとって必要な変革が何かを見つめた上で、陳腐化した経験を捨て、新たな知識や技術を獲得する姿勢がアンラーニングです。

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この記事を書いた人

KJ@DXコラム編集長

KJ@DXコラム編集長

エンジニア出身で現在は現在は営業窓口全般を担当しています。 お客様とのファーストタッチのタイミングからスピーディーに技術的な原因とその対応を行います。 DXの取組に興味を持たれたお客様と一緒になってゴールまで走り抜ける経験を2025年まで培っていきたいと思っています。 このコラムで2025年までの軌跡をお客様と作っていければと思っております

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