2023.04.11
DX推進指標とは?ガイダンスや活用するメリットと注意点などを解説
多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた取り組み、あるいは検討が始まっています。一方で、何から着手すればよいのか分からない企業も少なくないでしょう。そこで経済産業省では「DX推進指標」というツールを公開し、活用を進めています。
それはどのようなツールで、どのように役に立つのでしょうか。今回は「DX推進指標」の概要と活用のメリット、使い方などについて紹介します。
DX推進指標とは?
「DX推進指標」とは、DX推進の取り組みを自己診断するためのもので、2019年に経済産業省が「DX推進指標とそのガイダンス」として公開しました。各企業のDX施策を診断し、自社の現状や課題などを認識して課題の解決や対応策などを検討し、意思決定につなげるツールです。
ツールには、9つのキークエスチョンと26のサブクエスチョンが用意されています。それぞれの質問に回答していくことで、ベンチマークが返送される仕組みです。また、DXへの取り組みを評価する「DX認定」取得を目指すこともできます。
「DX推進指標」の内容は、2つの指標で構成されています。1つずつ見ていきましょう。
DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標
この指標で記されているのは、主に経営者が回答するべき項目です。ここで経営ビジョンやコミットメントを明確にし、組織、人材育成、企業文化などを見直します。
DXを実現するうえで基盤となるITシステムの構築に関する指標
この指標では、DX推進の取り組みを実現するためのITシステム構築の状況や、管理体制について記されています。データ活用の有無やシステム運用、セキュリティ対策など、新しい価値を生み出すために投資すべきガバナンスを理解することが可能です。
ベンチマークとは?
DX推進におけるベンチマークとは「指標」のことです。DX推進指標は、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が第三機関の中立組織として「DX推進指標自己診断結果入力サイト」を公開しています。
そこで自己診断のフォーマットを提供し、送信された回答を総合的に診断・分析したうえでベンチマークを返送します。このベンチマークによって、企業のDXに対する成熟度や他社との格差など理解を深めることが可能です。
IPAでは、成熟度レベルを0~5の6段階に分類しています。
レベル0:DX未着手
レベル1:戦略未定、一部限定的に実施
レベル2:戦略策定、一部の部署でDXに着手
レベル3:戦略に沿って部門間を横断するDXの取り組み実施
レベル4:定量的な指標をつくりDXの改善実施
レベル5:改革に成功し、市場競争でも優位性を獲得
DX推進指標が提示された背景
DXは、デジタル先進技術を駆使して新たなビジネスの創出やビジネスモデルの変革を起こすという意味です。それによりグローバル市場の優位性を獲得し、日本の経済発展を担うものとして経済産業省でDXの必要性を訴えてきました。
ただこのDXがなぜ必要なのか、何を目的としているのか認識されにくく、ビジネスでトレンドのように言葉だけが一人歩きする傾向にありました。そこで2018年の『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』において、企業の既存システムを刷新または変更する必要があること、データのデジタル化が必要であること、IT人材を確保すること、それらを解決しないことで日本企業が直面するであろう危機について説明しました。
これにより多くの企業でDXへの取り組みが検討され始めたものの、経営者や経営に携わる関係者が自社の課題を見直し、それが正しいか適切か、目標達成につながるものかを判断するのは容易なことではありません。そこで、それぞれの企業が現状や課題を認識し、DXに取り組むきっかけを提供するものとしてDX推進指標を策定しました。
DX推進指標を活用するメリット
各企業がDX推進指標を利用することで、得られるメリットがあります。
まずは、定性指標を診断することで自社のDXレベルだけでなく、会社が抱えている問題に向き合えることです。特に業績や事業維持に悩んでいる企業にとっては、現状を理解し進むべき方向性を検討しやすくなります。その結果、イノベーションにつながるアクションや戦略につなげられるでしょう。
また、DX施策の進捗を評価・管理できることもメリットと言えます。デジタルを活用しながら製品開発を行う、生産スピードを上げる、新規顧客を獲得するなど、目標を設定し段階的にステップを上げていくことが可能です。年に1回程度定期的に診断を行い、定量的な指標を受けることで、PDCAサイクルも立てやすくなります。
ほかにも、ベンチマークで他社との比較も可能です。自社の現状を客観的に把握し、効果的なデジタル・データの活用、事業の差別化などにつなげることができます。DX推進指標の活用が日本の企業全体に広がれば、議論も活発になり、ビジネスの活性にも寄与するでしょう。
DX推進指標を活用する際の注意点
メリットが多いDX推進指標ですが、考え方に注意しましょう。指標を設けることで、よい点数を受けることや、ビジネスモデルを評価されることに目的がシフトしてしまうことが懸念されるためです。
DX推進の取り組みに対しても、例えば「先進技術を活用して何を創造するか」ということに意識を向けることが大切ですが、実際には「先進技術で何をするか」という考え方に陥りがちです。活用の目的を見誤らないようにしましょう。
また、DX推進指標は経営幹部、事業部門、DX部門、IT部門などの回答を想定していますが、経営者自らがリーダーシップをとることが重要です。経営者が声を上げるだけでなく、実行し、責任を持たなければ、ビジネスが文化として根付くことはできません。
DX推進指標利用のプロセス
DX推進指標の具体的な活用方法について説明します。
まずは、経済産業省のホームページから「DX推進指標とそのガイダンス」「自己診断フォーマット」をダウンロードしてください。ガイダンスではDX推進の考え方や取り組み、準備、実施内容など詳細が説明されています。それらを確認したあと自己診断を行い、自社の状況を把握しましょう。
次に、自己診断結果を「自己診断フォーマット」に記入し、IPAの「DX推進ポータル」にアクセスして提出します。ログインにはgBizIDが必要で、持っていない場合は新規登録が必要です。その後は「DX推進ポータル」の利用マニュアルに従って、申請手続きを行ってください。
IPAでは自己診断の結果をもとに分析を行い、ベンチマークを作成、返送します。提出した記録はすべて記録されるため、年ごとの診断結果の比較などを行うことも可能です。
まとめ
経済産業省が2020年12月に発表した「DXレポート2 中間とりまとめ」によると、DX推進指標の自己診断結果を提出した企業のうち、95%がDXにまったく取り組んでいない、または取り組み始めた段階のレベルであることが明らかになりました。
変化するビジネス市場の中で、迅速に対応し続けるにはデジタルの活用が急務となっています。デジタル競争に負けない企業づくりのためにも、DX推進指標を活用し変革に取り組んでいきましょう。
(画像は写真ACより)
この記事を書いた人
KJ@DXコラム編集長
エンジニア出身で現在は現在は営業窓口全般を担当しています。 お客様とのファーストタッチのタイミングからスピーディーに技術的な原因とその対応を行います。 DXの取組に興味を持たれたお客様と一緒になってゴールまで走り抜ける経験を2025年まで培っていきたいと思っています。 このコラムで2025年までの軌跡をお客様と作っていければと思っております
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