2023.04.11
DX戦略が必要な理由。成功させるポイントと手順を知ろう
政府のDX推進により、ビジネスではデジタル技術の導入が進められるようになりましたが、それだけではDX化を実現したことにはなりません。
DX推進は、企業全体を巻き込む大きな力が必要です。ではなぜ、DX戦略が必要なのでしょうか。ここでは、その戦略の必要性を明らかにしながら、DX戦略を成功させるポイントや施策の手順などを解説していきます。
DX戦略とは?
経済産業省の「DXレポート」によると、DX戦略とは「IT技術の導入により事業をより良く変革し、市場競争上の優位性を確立すること」としています。新たなビジネスで現状を打開し、グローバル競争に強い産業をつくり経済の活性を目指すものです。
DX戦略が必要な理由
では、事業変革と市場競争の優位性にDX戦略はなぜ必要なのでしょうか。その理由として、ビジネス変革を求める3つが考えられます。
新しいビジネスモデルが必要なため
「DXレポート」では、近い将来日本が被る可能性がある経済的な損失を「2025年の崖」として警鐘を鳴らしています。現在の多くの企業が活用している既存システムが、複雑化・老朽化・ブラックボックス化し、十分にデータを活用できないと予想しているからです。
この問題を解決できなければ、2025年以降は年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性を指摘しています。一方でシステムの移行とDXを実現できれば、2030年には実質GDP130兆円超の押し上げを実現できると算出しているため、企業の取り組みが求められているのです。
消費者のニーズに応えるため
DX推進は、一般消費者の日常生活を便利で豊かにするビジネスの創出でもあります。日々変化する消費者のニーズに対応するためにも、DXの推進は必要とされています。
現在はECサイトでの買い物、病院の予約受付、レストランでの決済などさまざまなものがオンラインで完結しています。またビジネスでも、リモートワークなど遠隔での業務を実現しています。
消費者・労働者のスタイルや行動に対応するためには、先進技術とデータを活用するDXが必要です。
DX自体が目的化しないようにするため
DXというと、デジタル化すること自体が目的になってしまうケースも少なくありません。DXは、あくまでもビジネスに変革を起こすための手段です。企業の目的を明確にするためにも、目標を設定しDXを戦略として考えることが重要です。
DX推進ガイドライン
経済産業省では、DXレポートに続き「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を発表しました。このガイドラインは、推進するべき内容を2つに分けて説明しています。
DX 推進のための経営のあり方、仕組み
この項目では経営者/経営層のDXに対する理解と認識、取り組みに対する指針を提示しています。経営戦略としてビジョンを明確にし、新たな価値創造に向けた体制づくり、リーダーシップ、予算づくり、判断などを促すものです。
DX を実現するうえで基盤となる IT システムの構築
ここでは経営層、事業部門、DX推進部門、情報システム部門などで少人数のチームを組織し、必要となるITシステムの構築・刷新’や、人材確保・育成を行うよう指揮しています。また、システムをどのように移行するか、プランニングについても方向性を示しています。
DX戦略を成功させるポイント
DX戦略を成功させるには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。
目的をはっきりさせる
前述したように、DXは変革を起こすための手段であり、目的ではありません。まず「何のためにDXを行うのか」を明確にし、そのための短期的・中期的・長期的な戦略のシナリオを立て、DXの施策や方向性を決めていきましょう。
小規模なところから始める
DX推進による変革は大きなものですが、全てをいきなり変えることは困難です。大がかりなシステム変更は、業務に支障をきたす可能性があるほか、情報漏えいなどトラブルが発生した場合のリスクも大きくなり、対応も困難になります。
業務に影響の少ない小規模な分野から、段階的にITシステムを移行しましょう。
社内で一貫性のあるシステムをつくる
「DXレポート」が示すように、多くの企業ではデジタルシステムの構築、あるいは刷新が求められています。しかし部署ごと、拠点ごとなどバラバラな判断でシステムを導入してしまうと、データ連携がうまくいかず作業が繁雑・複雑化する可能性があります。
企業の資産であるデータを有効活用するためには、会社規模で一貫性のあるシステムを構築することが大切です。
DX人材を確保する
日本でDX推進が進展しない課題の1つとして、DX人材の不足があげられます。DX戦略には、IT技術とビジネスの変革を担える人材が必要ですが、実際に雇用するのが難しい現状です。
その場合はIT人材を外部から招き、チームを組成してDX推進の土台づくりを始めます。外部人材に任せきりにするのではなく、人材確保・育成を行い、中長期的な見方で内製化していく体制づくりと投資を行いましょう。
DX戦略の手順
それでは、実際にDX戦略を実践するための手順を解説していきます。
ビジョンを明確にする
DX戦略は、デジタル化による業務改善や売上向上などの狭い範囲の改善ではなく、企業価値の向上や社会貢献につながる広い意味での改革であり、企業理念、経営理念にもつながる考え方です。
理念は経営者が主体となって策定し、経営者自身が納得したうえでDX推進について社内外にコミットしていかなければなりません。
現状と課題を把握する
次に、自社の職場環境などの現状を把握します。ゴール(ビジョン)とスタート地点(現状)の距離を知ることで、どのような施策を行うべきかを決定することができるからです。DXは大まかに3つの段階に分けられます。
1.デジタイゼーション:紙書類のアナログデータからITを使ったデジタルデータへの移行
2.デジタライゼーション:データを活用した業務効率化や高度化の実現
3.デジタルトランスフォーメーション:データを活用したビジネスの創出・変革の実現
次に、DXの推進状況のレベルを測定します。
レベル0:ビジョンの未決定・未着手
レベル1:ビジョンはあるものの、部門単位での試行など⼀部での散発的実施
レベル2:ビジョンに基づき一部の部門での共有・実施
レベル3:戦略として仕組みを明確化し、全社共有、部門横断的に取り組みを実施
レベル4:評価・モニタリングなどを行いながら戦略として持続的な取り組みを実施
レベル5:デジタル企業としてグローバル競争で優位性を確立
自社がどのレベルにあるのかを把握し、施策、方針を策定していきましょう。
DXを推進していく
内容を決定したら、推進計画の設計を行います。ペーパーレス化、テレワーク環境の整備、人材育成などさまざまな取り組みが考えられますが、実施期間、予算、利用ツールなどを詳細に検討・実施します。
定期的な見直しをする
DX推進を進めるなかで、計画通りにいかない、予定と方向性が違うなどスムーズにいかないことがあります。計画のプロセスごとにKPIを設け、効果測定や評価、見直しを行いながら、目標達成に向けた取り組みを行っていきましょう。
まとめ
DX戦略では、何年もかけた施策が想定したものと違う、市場の変化によりビジョンと離れてしまった、というケースも考えられます。そのような場合でも、DX人材や推進チームは失敗を恐れず、柔軟に対応していくことが求められます。
特に自社の強みを活かしたビジョンを設定し、社内全体に周知しながら一丸となって取り組んでいくことが大切です。
これから施策を行う、または施策がうまくいかないという場合は、信頼のおけるITパートナーを見つけて、DX戦略について相談することをおすすめします。
(画像は写真ACより)
この記事を書いた人
KJ@DXコラム編集長
エンジニア出身で現在は現在は営業窓口全般を担当しています。 お客様とのファーストタッチのタイミングからスピーディーに技術的な原因とその対応を行います。 DXの取組に興味を持たれたお客様と一緒になってゴールまで走り抜ける経験を2025年まで培っていきたいと思っています。 このコラムで2025年までの軌跡をお客様と作っていければと思っております
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