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  3. DXを推進するXR技術とは?ビジネスに活用されるXR技術について紹介 

映像、音響技術や情報通信技術の進化によりVR、AR、MR、SRを含めたXR技術はこれまでにない疑似体験を味わえるようになっています。ゲームやエンターテイメント分野を中心に認知度が向上しており、製造業や医療現場、教育現場など幅広いビジネス業界で活用されています。


今回の記事は様々な業界から注目を集めているXRについて、基本的な情報をはじめ、「どんな技術なのかわからない」「DX推進に利用できる技術はないか」などの疑問をを持っている方に向けた「XR技術によるDX推進の活用事例」などをご紹介します。

XRとは

XRはExtended RealityやCross Realityなどの略称として呼ばれています。VR(仮想空間)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)、SR(代替現実)技術の総称であり、現実空間と仮想空間を融合させて新たな空間を創造する技術です。近年の研究ではVRとARを複合させた技術などが生み出されました。両技術の境界が曖昧だったため新たな名称の技術が考えられ、それらの包括的な総称としてXRという言葉が生まれました。

スマートフォンを専用のヘッドマウントディスプレイに装着するデバイスが一般的です。そのほかにも、スタンドアローン型の単体完結型や家庭用ゲーム機用、PC接続を前提とした専用機器などのエンドユーザー向けデバイスが登場しています。近年では装着しないタイプのXR技術についても研究されています。

VR(仮想空間)とは

VRはVirtual Realityの略であり、ヘッドマウントディスプレイなどの専用デバイスに仮想空間を投影することで現実世界を疑似体験する技術です。近年では仮想空間を自由に移動したりCGオブジェクトを動かしたりすることで没入感の高い体験をできます。教育、会議、広告等の場面では3D映像を仮想空間に投影し、VRコンテンツを共有する視聴型、さらにコントローラーデバイスを用いることで仮想空間内を自由に移動できる参加型は観光、住宅案内、エンターテイメント等の業界で広く利用されています。


初めて技術として認識されたのは1960年代であり、計算機科学者のアイバン・サザランドが開発した「ダモクレスの剣」が有名です。ヘッドマウントディスプレイを装着し、レンズに映し出された画像が現実と連動して移動する、VRの基になったような仕組みです。このようにVRのは長い年月の間研究され続けてきました。テクノロジーが急速に進化し始めた1990年代になってようやく、ゲームというエンターテイメント業界を中心に認知されるようになりました。当時はビジョンがあっても技術が追い付いていない状況でしたが、2016年頃から一般家庭でも手の届く価格で発売され始めたことで世間にも広く普及しました。代表的な製品だとMeta社の「Oculus Rift」やSonyの「PSVR」などのハイエンド型やGear VRなどのスマートフォンを装着して使用するモバイル型があります。

AR(拡張現実)とは

ARとはAugmented Realityの略でスマートフォンやタブレットなどのカメラを通して、仮想空間の情報やコンテンツを現実世界に表示する技術です。AR技術は現実世界に配置された目印をトラッキングすることで、空間の認識を可能とし、3Dキャラクターや3D映像といったCGオブジェクト、ARコンテンツを拡張表示します。そのためトラッキング方法にも種類があり、画像認識型、位置情報認識型、平面認識型などが存在します。

  • 画像認識型

紙や写真を目印としてARコンテンツを展開します。AR名刺やチラシ、看板などのマーケティング広告として利用されます。

  • 位置情報認識型

GPSを利用したコンテンツであり、特定の地点に移動したときARコンテンツを展開する。グーグルマップなどのマップ系サービスに利用されます。

  • 平面認識型

平面認識型は現実世界の高低差、奥行き、大きさなどを認識させることで自由にARコンテンツの出現場所を指定できる。代表的な例ではポケモンGOが上げられます。

MR(複合現実)とは

MRとはMixed Realityの略であり、MRゴーグルなどのヘッドマウントディスプレイを使用する。MRゴーグルにはカメラとディスプレイが内蔵しており、カメラで現実空間の奥行や高さ、平面などを認識し、CGオブジェクトや情報を現実世界に映し出すことが出来ます。

VRは仮想空間を自由に移動することが可能ですが、現実との連動性がないという点で違いがあります。デバイスを通してCGオブジェクトを視認するところはARと同じですが、MRの場合は自由に動かして360°すべての角度からコンテンツを視認できます。VRとARのそれぞれを含めたような技術がMRの特徴です。

SR(代替現実)とは

SRとはSubstitutional Realityの略称であり、現実を仮想空間で追体験できる技術です。SRは長年研究されているVRやARなどと比べ、登場して日が浅い技術であるため認知度が低く、まだまだ発展途上にある技術です。過去の現実空間を現在の現実空間と重ねることで、現実空間と仮想空間の境界を限りなく取り払い、ユーザーに虚構の現実を体感させることができます。仮想空間で完結するVR、現実空間に仮想物体を重ねることで付加情報を与えるAR、VRとARを組み合わせ現実世界と仮想空間を重ねるMR等と比較して、SRは限りなく現実に近い疑似体験ができます。


もともとこの技術はメタ認知、高次機能と呼ばれる機能、脳内の「感覚的な知覚、推測などを認知する」ような機能について研究するため、生み出されました。視覚だけでなく聴覚や触覚も疑似体験できます。これにより目に見えない感覚にアプローチすることが可能となり、SR技術は認知や心理実験などの医療分野を中心に活躍しています。

XR技術の活用事例

エンターテイメントや製造業、医療分野など様々な業界で注目を集めるXR技術ですが、その活用例についてご紹介します。

VRの活用事例

  • VR×アトラクション

VRとアトラクションを組み合わせたアミューズメント施設が増えています。必要な機材を持っていなくても、施設に行けば本格的なVRを楽しむことが出来ます。迫りくる敵を倒すシューティングゲーム、謎を解き明かすためにエリア一帯を歩き回るウォークスルー型アトラクション、可動式シートと3D映像を合わせたライド型アトラクション等、豊富なコンテンツが展開されています。

  • VR×広告

VR広告にはYoutubeやFacebookなどのSNSでVR動画を配信する方法と実際の街並みを再現した仮想空間に広告掲載する方法があります。VR動画は2D動画とは違い広い角度から投影された商品を見ることができます。それにより、ユーザーは疑似的な体験ができるため動画視聴者に与える影響も大きく、興味・関心を持たせやすくなります。高性能なヘッドマウントディスプレイではアイトラッキングシステムなどが搭載されており、ユーザーの視線を把握することで広告を認識した瞬間に課金される仕組みもあります。
また疑似体験だけではなく、これまでの広告のように仮想空間の中で街中に広告を設置し、配信する方法も利用されています。

  • VR×不動産

不動産ではVRを利用した内見(VR内見)が利用されています。VR内見はオンライン上で物件の内見ができるサービスです。現地に赴く必要がないため時間がない方や遠方のお客様にも、インターネット環境さえあれば気軽に体験することが出来ます。必要な機材はVR動画を撮影できる360°カメラと、内見を行うためのスマートフォンやVRゴーグルになります。最近では安価に購入できるため不動産業界ではVR内見の導入が増えています。

  • VR×研修

研修では実際の現場に赴かずともVRを利用して仮想空間内で研修が行うことが出来ます。場所を選ばずに利用できるため本来は屋外で行う実地研修をオフィスで行うことが出来るようになり、研修生の交通費や指導官の人件費削減にもなります。接客サービスや緊急対応の手順、危険を伴う研修など、聞いているだけでは分かりづらい対応もVR研修により効果的なスキル育成が行えます。

ARの活用事例

  • AR×プロモーション

ARとプロモーションは相性が良いため、多くの企業で利用されています。その中でもバーチャルでメイクを体験できるメイクシミュレーションがあります。この技術はAIとAR技術を組み合わせたものでオンラインでも様々なメイクを体験できます。リアルタイムでメイクが反映されているので、自由に表情を変えることで品質を確かめることできます。

  • AR×ファッション

ファッション業界においてはオンライン環境での試着ができるAR技術が利用されています。自身のサイズと同じマネキンを仮想空間に用意し、自由に着せ替えることができます。細かいサイズの微調整や試着したとき雰囲気が体験できるため、オンライン購入時の返品数の削減や顧客に対する満足度の向上に大きく貢献しています。

  • AR×家具

家具ではARを利用して部屋の中をカメラで読み取ることで、実際に家具を配置する体験ができます。360°様々な角度から家具を確認できるため、「スペースが足りなかった」「雰囲気が合わない」などのオンラインショッピングでよくあるミスを未然に防ぐことが出来ます。こちらのAR技術も多くのショッピングサイトで利用されています。

MRの活用事例

  • MR×製造

MR技術では製造業などで活用されています。従来の紙やパソコン上の手順書などを3Dホログラムで投影し、生産性やスキルの向上を目的に利用されています。作業員がMRゴーグルを装着し、搭載カメラが認識した部品に応じて必要になる作業手順書などを3Dホログラムで閲覧することが出来ます。従来の方法では分厚い手順書を手元に持って来る、Web上に管理されている設計書を確認するためにいちいちパソコンの元まで戻る等の作業をなくし、業務効率の改善に貢献しています。

  • MR×建設

建設業では現場の状況を管理するためにMR技術が取り入れられています。現場の人間が特殊なカメラで現場の状況を撮影することで、施工主や建設会社の担当者がオンライン上で工事の進捗具合を確認できるようになります。仮想物体として実現されるため配管や建物内の構造などを表示しながら、現場の状況を確認できます。

SRの活用事例

SR技術は医療分野で活用されています。自身の行動や考え方、様子などを俯瞰した場所から認識する「メタ認知」と呼ばれる能力の研究に利用されています。「この場所は危険だ」という推測、「今日は体調が悪い」という認識、「この問題は解けそうだ」という記憶、これらをSRシステムによって再現された体験からどのような生理現象を発生させるのか分析、研究に利用されています。


一部ではエンターテイメント分野でも活用されています。現実と過去を行き来するパフォーマンスが提供されています。過去と現在の映像を重ねることで、現実と虚構の境界が区別できなくなるSR独自の体験ができます。
これまで紹介した技術よりも日の浅い技術です。今後もさらなる発展が期待できるでしょう。

最新のXRデバイス

XRの活用方法についてご紹介させていただきました、ここからはコンテンツを体験するための最新XRデバイスについてご紹介します。

Apple VisionPro

Apple VisionPROは2023年後半に販売される予定のXRデバイスです。2023年6月に発表され、多くの業界の注目を集めている製品です。

特徴は四つあります。一つ目は、12個のカメラと5個のセンサー、6個のセンサーを搭載し、現実世界とデジタルコンテンツのシームレスな融合を実現した「空間コンピューター」を体験できます。
二つ目はコントローラーレスな基本操作です。今までのXRデバイスとは違い、コントローラーを必要とせず指で触れたりつまんだりする細かな動作、視線の動きや瞬きを捉えるアイトラッキングシステム、Siriを用いた音声操作を利用できます。
三つめは半スタンドアローン型として使用できる点です。VisionPRO単体での利用も可能であり、外付けの充電器を接続することでコードレスなXR体験ができます。
四つ目は「EyeSight」です。本体は視界を全面的に覆うタイプのデバイスです。外付けカメラがあるため周囲の状況も多少は把握できますが、CGオブジェクトに注目してしまうため人の存在に気づけない場合もあります。しかし「EyeSight」は周囲の人間を認識して強調表示を行うことができます。


スマートフォンや周辺機器で有名な企業ですが、そんなApple社渾身のXR製品であるため多くの期待、関心が向けられています。

Meta Quest3

MetaQuest3はMeta社が開発した最新MRデバイスです。2023年10月に販売、価格は74,800円です。

MetaQuest2の後継機であり、従来の40%薄型化、解像度の向上など全体的に性能が上回っています。Meta製品の特徴であるスタンドアローン型であるため、PCやスマホに接続する必要が無くケーブルの煩わしさに悩まされることがありません。PC上で配信されている高水準なVRコンテンツを利用するための機能「Oculus Link」「Air Link」が標準装備されています。前面に二つのカメラとセンサーが搭載されているのでMRデバイスとしての利用もできます。


Meta製品は他の最新XRデバイスと比べ安価であるため、導入のしやすい高性能デバイスとなっています。

Holo Lens2

HoloLens2はMicrosoftの開発したMRデバイスです。2019年から販売され、価格は422,180円。

製造業や開発者などのビジネスを想定した同種の製品も販売されています。Windowsを標準搭載しているため業務ツールやアプリとの連動が可能です。こちらの製品も現場作業での使用を想定してるため、デバイスのみで操作ができるコントローラーレスに対応しています。基本操作としてハンドジェスチャーでの操作が可能となっておりコントローラーが不要です。

HoloLens2は現在、製造業や医療現場、教育現場などの多くの業界で導入され、活用実績の多くある人気の業務向けデバイスです。

抑えておくべき注意点

失敗する要因

XRは「疑似体験」というテーマのもと、多くの分野で多種多様な活用がされています。XRは目的に応じて適した技術があります。XRのDX活用の失敗してしまう要因には

  • 疑似体験を前提としていない企画をしてしまう
  • XR技術を導入することで発生する費用対効果の分析が不完全
  • XRの導入が目的になり、戦略やマーケティングが曖昧なままコンテンツ展開をする

などがあげられます。総じてXR技術に対する知識が不足した企画立案は失敗する傾向にあります。

成功した共通点

XRのDX活用に成功した共通点として以下の点があげられます。

  • 活用事例から自身の業界に適したXR技術を理解する
  • どのような疑似体験を提供するのか明確にする
  • XR取り入れた環境がどのようなメリット、デメリットを及ぼすのか把握する

XRにできることや既に行われている活動などの知識を事前に把握し、目標や目的に応じて求められる技術を理解することが重要になります。

まとめ

XRは情報通信技術、音響技術、映像技術等の発展に伴い、没入感の高い仮想現実が実現できるようになりました。世界のXR市場は拡大の兆しを見せており、Apple、Google、Microsoftといった主要企業によるハードウェア、ソフトウェアの研究開発が盛んに取り組まれています。そんなXRですが、現在各業界で注目を集めており、それをどのように活用ができるのか検証を重ねていく必要があります。XRに対する知識を大前提として、業務ごとに求められる目的用途に応じてどのような運用ができるのか、どのような技術が活かせるのか考えを深めていくことが、XRを最大限に活用する鍵となるでしょう。

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この記事を書いた人

KJ@DXコラム編集長

KJ@DXコラム編集長

エンジニア出身で現在は現在は営業窓口全般を担当しています。 お客様とのファーストタッチのタイミングからスピーディーに技術的な原因とその対応を行います。 DXの取組に興味を持たれたお客様と一緒になってゴールまで走り抜ける経験を2025年まで培っていきたいと思っています。 このコラムで2025年までの軌跡をお客様と作っていければと思っております

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