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  3. DXの失敗事例には、どのようなパターンが多いか?

企業のDXは、業務効率化を中心に進展しつつあります。しかし、うまくいかずに失敗に終わるケースも少なくありません。失敗事例は表面化しないため取り上げるのが難しいのですが、失敗から学ぶことは大切です。DXが失敗するパターンについて、組織の問題、リソース不足の問題、理想や目標に到達できなかった問題の3つから考察しました。

よくあるDXの失敗を3つに分類

経済産業省は、2022年7月に発表した「DXレポート2.2」において、DX推進は着実に前進していることを評価しつつ、デジタル投資は「既存ビジネスの維持・運営に約8割が占められている」と報告しています。そして、サービスの創造・革新といったバリューアップで成果を出している企業は、1割未満に留まる状況にあります。

参考:『DXレポート2.2(概要)』令和4年7月、経済産業省(PDF)

サービスの創造・革新に至らないことは失敗とはいえませんが、理想と現実に乖離があるのであれば問題であり、改善が必要です。こうした現状を踏まえた上で、DXが失敗するケースを以下の3つに想定して分類しました。

  • 組織による失敗のケース
  • リソース不足による失敗のケース
  • 理想や目標に到達できなかった失敗のケース

DX推進が中途半端に終わってしまうのは、どのような状態であり何が原因なのか、詳しく考察していきます。

組織に関する失敗のケース

DXは技術革新とともに組織や人材の革新が必要です。どれだけ技術が進んでも、人間が技術革新に追いつかなければ意味がありません。企業のDXでは従業員と組織が大きな役割を担い、企業文化や社内風土も影響を与えます。

組織の課題からDX推進が失敗する3つのパターンを取り上げます。

社内で対立が生まれた

DX推進にあたって生まれる社内の対立には、主として次の2つが考えられます。

  • 部門間の対立
  • 革新的な社員と保守的な社員の対立

まず部門間の対立には、たとえばDXを推進する情報システム部門と業務を遂行する現場の対立があります。情報システム部門が急進的な改革を進めようとすると、現場は反発します。現場に浸透しなければ、DXによって成果をあげることは困難です。

次に革新的な社員と保守的な社員の対立があります。実績のある保守的な社員は、これまでのやり方を維持したがるものです。企業文化や社風も重要な要因であり、提案を受け入れる寛容さ、挑戦的な風土がないと、DXに限らずあらゆる改革が動き出しません。「どうせやってもムダだろう」という意識が改革を止めてしまいます。

全社的な展開に拡大しなかった

IT全般において、導入しやすい部署から試験的に始めて全社に拡大する王道的な方法があります。いわゆるスモールスタートです。ところが、スタートは順調だったとしても未改革の部門と改革の温度差が拡大し、結果として会社全体に拡大できなくなるケースが少なくありません。

ベンチャー企業の多くは機動力があり、変化に迅速に対応できます。しかし、企業の成長にしたがって多様な人材が集まると、フットワークが鈍って柔軟な対応ができなくなります。多様性を尊重するゆえに、意見や方向性がまとまらない場合もあるでしょう。

また、新規開拓営業よりルートセールスが基本のような老舗企業は、変化に対する抵抗が強い傾向があります。業界の体質にもよりますが、保守的な業界ではDXに関する計画が中途半端に終わってしまいがちです。

リーダーシップが発揮されなかった

経営者がDX推進を表明して現場に任せたものの、自主的に行動を起こす社員がいなかったために自然消滅してしまったという失敗のパターンです。

プロジェクトの進捗を連帯責任にすると責任の所在があいまいになり、計画通りに進まなくなります。リーダーシップも重要です。最悪の場合は責任転嫁によって組織間のムードを悪化させ、連携や恊働ができなくなります。

DX推進にあたっては、まず経営者やボードメンバーが取り組む意義をしっかり社員に説明して浸透させることが大切です。プロジェクトの組織体制は明文化し、責任者とメンバーの役割を明確にすべきでしょう。また、定例会議などを設置して進捗の報告を行い、円滑なコミュニケーションと情報および問題意識の共有に努めることが必要です。

リソース不足に関する失敗のケース

次に、リソース不足からDXが失敗するケースを考察します。

DX推進のために必要なリソースとして考えられるのは、主としてヒト・モノ・カネです。情報も必要ですが、最も大きな失敗要因は人員不足です。人員不足に関しては、社内はもちろん外部協力会社のリソースも含めて対応が求められます。

人材不足、優秀な人材が採用できなかった

2018年に経済産業省は『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』を発表しました。このレポートでは、このままDXに対応しないと2025年以降、年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘しています。

参考:『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』経済産業省

DXの人材不足は大きな課題です。AIの技術が急激に進展していることも踏まえると、さらに人材不足が深刻化する可能性が考えられます。

DXを推進するためには、先端技術に精通していることはもちろん、経営的な視座から戦略的にビジネスを構想できる人材がもとめられます。優秀な人材は、せっかく採用しても辞めてしまうことが少なくありません。モチベーションを維持させる対策が必要です。

スキル不足、社内で人材育成ができなかった

DX推進のために優秀な人材を外部から採用できないのであれば、自社内で育成することを検討すべきです。そこで技術の再習得としてリスキリングが注目されています。

しかし、人材育成には研修費の投資とともに時間がかかります。また、通常業務を維持しながらスキルを磨いていかなければならないため、従業員の負荷が大きくなります。結局これまでのルーティンワークを優先して、戦略的なDX推進まで手が回らなかったという形で失敗します。

解決策のひとつとして、通常業務の一部をアウトソーシングして、社員を戦略的な業務に集中させる方法が考えられます。

設備不足、DX推進に応えるスペックが足りなかった

続いて設備に関する課題から失敗するパターンです。戦略的なDXを展開する場合、クラウドはもちろん社内のサーバーやクライアント端末のスペックの見直しが生じることがあります。老朽化したシステムでは、データの利活用などのパフォーマンスを得られないことがあるからです。

リモートワークの環境を整備するときにも、ノートパソコンやスマートフォンの端末を支給に加えてセキュリティ強化を徹底していくと、設備投資が増加します。結果として計画時点で断念せざるを得ないことになります。

資金不足、計画実現のためのコストがかかりすぎた

これまで述べた人材投資、設備投資に関わりますが、DX推進を設計したが実現にあたって資金不足で断念せざるを得なかったパターンです。景気の変動や事業の不振など経営状況が悪化して、DXの規模を縮小しなければならなかったという企業もあるでしょう。DX推進はお金がかかります。人材や設備などあらゆる面の資金が必要です。

パートナー不足、外部協力会社との関係に課題があった

DXをソリューションとして掲げるIT企業は多々ありますが、オールラウンドに展開する大企業のほか、ペーパーレス化、デジタル化、業務効率化のように専門分野があります。自社が求めている技術改革や目標を共有できない外部協力会社と組んでしまうと思うようにDXが進まない状況に陥ります。

ただし、パートナー企業だけの問題とはいえません。外部のベンダーに丸投げするのではなく、経営者または現場の社員が明確な目的意識を持つことが必要です。外部からの提案を判断ができる知見を持つ必要があります。

理想や目標に到達できなかった失敗のケース

最後は、DXのスケールを大きくとらえすぎて失敗したパターンです。中小企業では、人材、設備、資金のすべてにおいて限られたリソースを最大限に活用する必要があります。したがって、大企業のようなDXの理想を描いてもうまくいくとは限りません。

目標のスケールが壮大だった

再度取り上げますが、経済産業省の「DXレポート2.2」で触れられている通り、DXの分野で新たなビジネスの創造に取り組んでいる企業は1割に満たない状況です。多くの企業では、DXの実現が業務効率化などを目的とした領域に留まっています。

チャレンジ精神は貴重ですが、あまりにも壮大なスケールの理想像を描くとプロジェクトが頓挫します。DXが課題解決になるばかりか、たくさんの課題を残した状態で終わってしまいます。失敗に寛容な海外のビジネス環境とは異なり、日本では失敗のダメージが会社全体に悪影響を及ぼしやすいといえるでしょう。

また、DX推進を掲げたものの、従来のIT化程度の結果しか出せなかった場合もあります。「営業担当者が請求書をPDFでやり取りするようになった」という改善は大きな前進とはいえ、先端技術を使った新しいビジネスの創出には遠いものです。

高い目標が厳密にいえば悪いわけではありません。中間目標としてKPIやOKRがしっかり練られていたり、やりがいが持続できる計画になっているなど、地に足の着いた計画になっていることが大切です。

無差別なIT導入により逆に生産性が低下した

全体設計をしないで無計画にDX推進した結果、かえって業務が複雑化し、現場に混乱を招いてしまうことがあります。

たとえば、部門ごとにクラウドのサービスを導入して、全社的な連携が困難になる場合が考えられます。新しいシステムの使い方の習得に時間がかかり、ヘルプデスクに問い合わせが集中するなど問題が生じます。効率化を目的としたDXが、かえって生産性を低下させてしまったパターンです。

積極的に新しい技術やサービスを試すことは大切ですが、全体を見渡して最適な設計をしなければ、投資が無駄になります。

DXを失敗させないために

DXは経営者のトップダウンによって全社的に行うべきです。また、短期的に結果が出るとは限りません。長期的な視野のもとに取り組む必要があります。したがって、ビジョンを明確にするとともに、目的や指標を設定し、適切な人員を配置した組織体制によって行うとよいでしょう。さらに個社で完結するのではなく、業界全体の動きをとらえて企業間で連携し、パートナーと協力体制を結んで行うことが大切です。

まとめ

DXの領域は幅広く、企業だけでなく社会自体を変革します。経営者が明確なビジョンを示して組織体制を整備するとともに、人材・設備・資金などのリソースを確保して、持続的に取り組むことが求められます。失敗は恐れるものではなく、乗り越えるためにあります。

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この記事を書いた人

KJ@DXコラム編集長

KJ@DXコラム編集長

エンジニア出身で現在は現在は営業窓口全般を担当しています。 お客様とのファーストタッチのタイミングからスピーディーに技術的な原因とその対応を行います。 DXの取組に興味を持たれたお客様と一緒になってゴールまで走り抜ける経験を2025年まで培っていきたいと思っています。 このコラムで2025年までの軌跡をお客様と作っていければと思っております

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