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  3. DXを着実に進めるPoCのすすめ、何をどうすべきか

AIを筆頭に新たな技術が次々に登場し、急速に発展しています。先端技術によるソリューションは、大きな可能性を秘めている一方でリスクがあります。予期しなかったトラブルが発生したり、期待通りのパフォーマンスが得られなかったり、すべてがうまくいくとは限りません。したがって事前に検証が必要です。ここでは、DX導入前に実証を行うPoCについて解説します。

DX推進で重要度の高まるPoC(概念実証)

システム開発に携わっていると馴染みの深い言葉ですが、システムを導入する前に検証する方法にPoCがあります。POCは「Proof of Concept」の略であり、日本語では「概念実証」と呼ばれます。読み方は「ピー・オー・シー」または「ポック」です。アイデアや技術が実現可能かどうか検証する作業全般を指し、IT業界だけでなく医療業界やエンターテイメントの業界でも行われています。

DX推進において「PoC」の重要性が高まるようになりました。先端技術を使ったソリューションは一度に全体の仕様を決めて、一気に導入するのは問題があります。部分的に検証を繰り返しながら、全体に展開していく方法で導入されることも少なくありません。

このとき、期待通りの効果が得られない場合は、仕様変更や、開発自体の中止の判断をします。大きな損失を出したり、やり直したりすることを防ぐために、慎重に進める必要があります。

PoCでは何を検証するか

一般的にPoCでは次の3つの検証を行います。

実現可能性は、たとえばRPAで業務を自動化する場合、従来のフローに合わせて自動的な処理が可能化どうかを検証します。IoTの活用であれば、センサーから十分な情報収集ができるかどうかといったことが検証の対象になります。

  • 実現可能性
  • 費用対効果
  • 具体性

費用対効果の検証は、経営的な視座から重要です。どれだけDXに投資を行っても結果が得られなければ有効とはいえません。

また、技術やアイデアありきでシステムを設計すると、インターフェースの使い勝手が悪いなどの問題が生じることがあります。PoCで検証する具体性とは、ユーザービリティやユーザー体験(UX)をチェックすることです。現場の担当者に試してもらうことも大切になります。

PoCでは、PoT、PoV、PoBと呼ばれる3つの観点も重視します。それぞれ簡単に解説していきましょう。

PoT:技術を実証する

PoT(Proof of Technology)はテクノロジーの実証です。先端技術の利用においては、まず技術の実証が求められます。ただし、当然のことながら実際に使える技術が前提であり、重要になるのは、その技術が自社の現場で使えることの実証です。PoCとPoTは混同して使われることが多く、またPoCがPoTだけで終わってしまうことがあります。技術以外の検証も視野に入れるべきです。

PoV:価値を実証する

PoV(Proof of Value)は価値の実証です。アイデアや技術は問題なくても「そのDXはやる価値があるのか?」を検証します。費用対効果にも関連しますが、効果が得られなくても、先行投資として取り組む価値があれば導入を進める判断をします。あるいは実現可能であっても、投資に対する効果に価値がなければ中止します。リスク回避というマイナス面だけでなく、得られる価値のプラス面からも検討を行います。

PoB:ビジネスとして事業性を検証する

PoB(Proof of Business)は事業性の実証です。経営戦略やビジネスモデル、新規ビジネスの構築であれば損益分岐点の分析などを検証します。要するに価値の実証をさらに進めたものといえるでしょう。ビジネス全体において、どの部分をシステム化するか、内製化あるいはアウトソーシングするかによって、開発費用が大きく変わります。自社のリソースを見極めた上で実際に進めるDXを最適化します。ビジネスの成功に関する仮説を立て、実現の確度が高い方向性を探るための実証です。

PoCの重要性と実施すべき3つの理由

あらためてPoCの重要性と実施すべき3つの理由を3つの項目として整理します。

  • リスクの回避
  • コストや開発工数の最適化
  • 認識の共有と意思決定

最も重要になるのはリスクの回避です。開発やシステム導入に着手したときに起こりうるトラブル、不十分なパフォーマンスをチェックして、実証段階で解決策を探ります。また、実証結果を評価し、コストや開発工程を最適化することも重要です。そして実証の結果から認識を共有し、プロジェクトを進めてよいか、そのシステムに投資すべきかといった意思決定を行います。

特に大規模なシステム導入の場合には、導入後に生じるあらゆるシステム障害を想定して対策を練ることが大切です。システムの規模が大きければ、トラブルが生じたときに原因を突き止めるまで時間がかかり、解決するまでの作業を行う人的負荷はそれだけ大きくなります。

また、設計時にはあらゆる機能を詰め込みがちになります。PoCによって不要な機能を見極め、あらかじめ削ぎ落としておくことによりコスト削減ができます。

PoCにおいて気をつけること

リスクの回避や効率的なDX導入において重要なPoCですが、注意点もあります。

まず、PoCを実施して期待通りの結果が得られなかった場合、何度も繰り返すケースがあります。コストがかかり、開発着手までの時間が長期化するため注意が必要です。結果として「PoC疲れ」と呼ばれるプロジェクト担当者の消耗が生じるようになります。

コストを抑えるべきPoCが、開発前の段階でコストを膨らませてしまうのは問題といえるでしょう。開発側と現場に関わる全体のモチベーション低下にもつながります。

また、公開して実証実験を行うような場合、新サービスの提供に関する機密情報の漏えいを招く可能性が生じます。AI、IoT、ブロックチェーンなど先端技術の導入に取り組んでいることはプレスリリースとしての効果があり、業界にインパクトを与えるものですが、慎重に進めるべきです。

DXの領域では何がPoCとして必要か

あらゆるDXのPoCにおいて、実証すべき重要な領域のひとつがセキュリティです。ブロックチェーンをはじめ決済システム、RPAで顧客情報のデータベース格納を自動化する場合、情報漏えいや不具合のトラブルがあると、企業の社会的信頼を失う事態になりかねません。十分に検証を行う必要があります。

次に急速な発展の途上にあるような技術を採用する場合です。AIがめざましい発展を遂げていますが、目新しさだけに着目して期待しすぎるのは問題があります。成果を出せるのか、費用対効果の検証が求められます。IoTに関していえば、収集した情報を分析し、それがさらに現場の生産性工場や負荷軽減に役立ってこそ意義があります。

既に多くの企業に普及して安定稼働しているソリューションであれば、たくさんの事例から成果を予測できます。大企業のケース、中小企業のケースといったように、過去の実績から自社の状況に合わせた確度の高いシミュレーションも可能といえるでしょう。しかし、導入事例が少ない先端技術のソリューション導入では、PoCは必須です。また、自社が特別な業務フローや環境にある場合にも、テストと実証が欠かせません。

PoCの進め方、4つのステップ

メリット、デメリット、どのような領域のPoCをすべきか説明しましたが、続いてPoCの進め方を4つのステップに分けて簡単に説明します。

STEP-1:計画

導入するシステムのうち実証したい部分を定めて、PoC全体の計画を立てます。PoCの目的とゴールを明確にした上で、現場の意見や要望をヒアリングしつつ、技術的な側面の考察を加えて方向性を定めていきます。

STEP-2:検証のための試作と実装

計画にしたがって実証のためのシステムを試作します。試作にあたっては、パフォーマンスを計測して、データの収集と分析が可能なチェックツールの導入も必要です。データを測定し、予測値に達しているかどうかはもちろん、実際に稼働したときの結果と比較します。

試作したシステムは、現場もしくは現場の環境をシミュレーションできる環境下で実装します。当然ではありますが、ハードウェアの仕様や通信環境が異なった場合、検証のためのテストは意味をなさなくなります。

STEP-3:実証

システムと環境が整ったら、実証を行います。実証時にシステムの性能や処理時間、負荷などのデータを収集します。データとともにプロジェクト全員の所感や意見を集めます。開発者やエンジニアはもちろん、現場の担当者から経営者まで、可能な限り多くの人からの使用感などの情報を得ることが大切です。

STEP-4:評価と検討

実証で得られた結果から、リスク、費用対効果、事業として価値、実現可能性などを評価します。さまざまな側面から客観的な評価を行います。評価にしたがって、再度PoCを繰り返すか、そのままシステムの開発に進むか、プロジェクト自体を再検討します。場合によっては、中止の判断を下すこともあります。

PoCを成功させるポイント

既に触れましたが、PoCは現場の環境と同一の条件で行うことが重要です。当然のことながら、サーバー、プラットフォーム、通信環境などインフラの条件のほか、利用人数、時間帯、処理する内容によって、システムに対する負荷が大きく異なる場合があります。さまざまな場合を想定して、チェックすることが成功のポイントです。

ただし、実証する機能などの範囲は最小限にすべきです。小規模の実証を積み重ねていくことで、安定した信頼できるシステム構築をめざすとよいでしょう。複数の目的の実証を一度に実施しようとすると、トラブルが起きたとき、何が原因だったのか見極めにくい場合があります。複雑な要素が絡み合うような実証は避けるべきです。

まとめ

フットワークの軽さは中小企業の強みです。経営者が先端技術を先取りし、DX推進のためにチャレンジする姿勢は貴重といえるでしょう。しかし、PoCによる慎重な実証のプロセスも大切です。本稼働後に重大な問題が発覚して予期せぬトラブルが発生した場合、社会的な信用を失墜するリスクがあります。PoCによるリスク回避の検討はもちろん、事業性を見極め、冷静な経営判断を下すこと。それが中小企業の果敢な変革を成功に導きます。

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この記事を書いた人

KJ@DXコラム編集長

KJ@DXコラム編集長

エンジニア出身で現在は現在は営業窓口全般を担当しています。 お客様とのファーストタッチのタイミングからスピーディーに技術的な原因とその対応を行います。 DXの取組に興味を持たれたお客様と一緒になってゴールまで走り抜ける経験を2025年まで培っていきたいと思っています。 このコラムで2025年までの軌跡をお客様と作っていければと思っております

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