2023.04.11
AIによる需要予測が従業員の負担を大幅に軽減!その活用事例を紹介
ビジネスにおける事業計画やマーケティング活動において、需要予測は経営の根幹を支える重要な要素です。
精度の高い需要予測を行うことで、適切な在庫管理や経営資源の効率的な分配が可能になります。また、顧客に対して最適なサービスを提供することができ、利益を最大限効率的に上げることができるでしょう。しかし、人による需要予測はどうしてもベテランの経験や勘に基づく属人的な要素に頼る必要がありました。
そこで、AIの高度なデータ分析力を活用すれば、売上や需要といった過去データから傾向や特徴をAIが学習し、在庫管理の最適化や販売戦略の立案に役立てることができます。これにより、企業は従来よりも精緻で実用的な需要予測を行えるようになるでしょう。
本記事では、AIを使った需要予測がどのようにビジネスに役立っているのか、その仕組みや実際の導入事例とともに、導入がもたらすメリットについて解説していきます。
目次
需要予測とは? 予測の仕組みについて
需要予測とは、商品やサービスの今後の需要量を予測し、適切な供給計画や在庫管理、販売計画を立てるための分析手法です。
商品やサービスを提供している企業は需要予測を通じて、在庫の調整、効果的なマーケティング戦略の実行、生産計画の策定などを行います。
具体的には以下のような社内データを用いり、商品がどれくらい売れるか、どれくらい必要かを予測します。
- 商品の購入履歴、廃棄データ
- 気象情報
- 過去の混雑時間帯、曜日ごとの客数の変化
- 物流データ
従来では、主に過去の販売データや市場動向などを基にした統計的手法が用いられてきましたが、AI技術の発展により、より多様で詳細なデータを取り入れた高度な需要予測が可能になり、利益の最大化を目指す企業が積極的にAIを活用した需要予測の導入を進めています。
AIによる需要予測を活用する3つのメリット
①属人的なシステムにならない、データを裏付けた確実な経営判断を下せる
AIは膨大なデータを同時に処理し、各製品の需要を正確に予測できるため、データをもとに裏付けられた堅実な経営判断を行うことができます。
従来、人間が過去データの分析や処理を行うと、どうしても人為的ミスや精度にばらつきが生じがちでした。また、需要予測を担当するスタッフがいなくなってしまうとそのノウハウを次の担当スタッフが引き継ぐことはとても難しい状況でした。
しかし、AIによるデータ分析はこうしたヒューマンエラーを最小限に抑え、根拠あるデータを活用した収益性の高い生産計画を実現できます。
また、AIは担当者が変わっても問題ありません。AIは一貫してデータを分析し続けるため、ノウハウの引き継ぎが不要であり、経験の少ないスタッフでもすぐに対応できます。これにより、スタッフの異動や退職による影響を最小限に抑えられ、安定した需要予測と生産計画を継続できます。
例えば、コンビニやスーパーなどの小売業界では、AIが顧客の属性や購入履歴、廃棄データ、混雑時間帯などのデータを分析することで、「40代男性の来客が増加している」といったトレンドを正確に捉えることが可能です。これにより、需要に応じた商品開発や発注量の最適化ができ、食品ロスの軽減といった付加価値も期待できます。
②スタッフの業務負荷軽減、作業時間の最適化
AIによる需要予測を導入することで、従来手作業で行われていた需要予測業務をAIが担うようになるため、スタッフは店舗運営に集中でき、顧客の満⾜度の向上や従業員の働きやすい環境の構築にもつながります。
需要予測を専任で担当するスタッフがいない企業においては、AIが予測を担うことで他の業務との兼務負担が軽減され、スタッフの作業負荷の減少にもつながるので、スタッフのモチベーション低下や離職率の上昇といったリスクも軽減されるでしょう。
また、需要予測をスタッフが手作業で行う必要がなくなるため、データ収集や分析にかかる時間が大幅に短縮されます。
③AIで在庫を最適化することで、欠品防止と廃棄削減を実現
在庫の最適化は、サービスの品質や価格に直結する重要な課題です。しかし、最適な在庫量を予測するために必要な、リアルタイムで変動するデータに対応することは非常に難しい作業です。
そこでAIによる需要予測を活用することで、売上や顧客属性、天候などのデータをリアルタイムに反映し、需要に応じた最適な在庫量を割り出すことができるようになります。
これにより、欠品による販売機会の損失や過剰在庫による廃棄を削減することができます。
AIによる需要予測の活用事例
イトーヨーカドー:AI商品発注システムの導入により、
発注作業を30%短縮
セブン&アイ・ホールディングスでスーパーマーケットチェーンを全国展開するイトーヨーカドー(本社:東京都千代田区)は、2020年9月から全店舗にAI需要予測を活用した発注システムを導入しています。
このシステムでは、下記のデータを活用しAIが最適な発注量を算出しています。
- 価格や商品陳列の列数
- 気温・降水確率などの天候データ
- 曜日特性や客数の変動
導入後、発注作業の時間は約30%削減され、さらに在庫の適正な管理により販売ロスも減少しました。
参考元:https://www.itoyokado.co.jp/__resources__/537d8843-ee9b-4f55-8dcf-b03f5c16f04d.pdf
ライフ:自動発注システムの導入により発注作業を50%短縮
スーパーマーケットチェーンを全国展開するライフコーポレーションは、2021年1月からAI需要予測による自動発注システムを導入しました。
このシステムでは、店舗の販売実績や販売計画、気象情報なども活用し、AIが商品ごとの需要を算出します。
従来では、販売期間が短く対応が困難だった牛乳や野菜などの日配品も発注の自動化を可能にし、2024年には生鮮食品にも対応が広がりました。
AI導入により、スタッフの発注業務にかかる時間を1日あたり4時間から一日あたり2時間程度と約50%削減、経験の少ないスタッフでも高精度な発注が可能になりました。
参考元:http://www.lifecorp.jp/vc-files/pdf/newsrelease/others/20210119aijyuyouyosokuhaltuchilyuu.pdf
スシロー:AI売上管理・需要予測システムを導入し、
廃棄量を75%削減
回転寿司チェーン「スシロー」を展開する株式会社あきんどスシロー(本社:大阪府吹田市)は、店舗の売上と在庫管理を効率化するため、AIを活用した売上管理・需要予測システムを導入しています。
スシローでは従来から各皿にICタグを付け、「いつ、どの寿司が食べられ、どの寿司が廃棄されたか」といった寿司の鮮度や売上状況などのデータが蓄積され、これまで10億件以上のデータが集積されました。
しかし、膨大なデータ量ゆえに活用が難しくなっていたため、スシローは蓄積されたデータを有効活用するためにAI需要予測システムを導入しました。
これにより、過去データとリアルタイムの店内状況を照らし合わせながら、製品ごとの売上パターンを予測することが可能になりました。
スシローは蓄積していたデータを活かしたAI需要予測の導入により、メニューの廃棄率を75%削減しつつ、原価率50%を維持したまま売上を伸ばすことに成功しました。
参考元:http://www2.cgu.ac.jp/kyouin/takahashi/siryou/jouhou_syokugyou/sushiro.pdf
サントリー:AIを従業員のパートナーとして導入し、
需給作業を削減
酒類や清涼飲料水、食品などを取り扱う大手メーカーのサントリーホールディングス株式会社では、需給業務の負荷を削減するためにAI需要予測を導入しました。サントリーはAIの導入について、スタッフと協業するパートナーとして活用する理念を掲げています。
AI予測に基づく予測値とその根拠をスタッフに提示し、その情報をもとにスタッフがAI予測の修正や業務プロセスの改善を行うことで、AIの予測精度を高めつつ、業務の質を向上させています。
これにより、約6,000時間/年の需給業務時間を削減し、需給業務の割合も75%から50%に低減に成功しました。
参考元:https://www.suntory.co.jp/company/digital/innovation/ai.html
まとめ
本記事では、AIを活用した需要予測の仕組みや実際の導入事例について解説しました。
AIによる需要予測は、個人の経験に頼る従来の手法に比べ、データをもとにした情報で精度が高く、迅速に予測を行える点が大きなメリットです。
現在、小売業界をはじめ、飲食業界や製造業など幅広い分野でAI需要予測の導入が進んでいます。AIの導入は専門的な知識が必要だと思われがちですが、プログラミングスキルがなくても利用可能なツールやサービスも増えており、手軽に導入できる環境が整いつつあります。
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