2023.04.11
中小企業におけるDX化の問題とは?推進すべき理由と成功事例
経済産業省が2022年に発表した「DXレポート2.2」では、DX化に少しずつ取り組む企業が増えているとしながらも、既存ビジネスの運営を維持している企業が約8割を占めると報告されています。
DXは、中小企業こそが必要とする概念と言われています。ここでは、中小企業におけるDXの課題や必要とする理由、そして中小企業のDX成功事例を紹介します。
中小企業でのDX化に関する課題
大企業を中心にDX化の取り組みが進められていますが、中小企業では未着手または検討段階が多いのも事実です。なぜ中小企業ではDXが進められないのか、直面している課題を挙げていきます。
人材・人手不足
まず課題として挙げられるのは、少子高齢社会による労働人口の減少です。そのなかでも、IT人材など専門的なスキルを持つ人材の確保が大企業と比べて難しくなっています。IT人材を確保できなければ、内製化もさらに困難になることが予想されるでしょう。
DXに関する知識不足
DXに関して、経営層・従業員ともに知識が不足していることも、DXが進まない原因の1つとされています。DXの推進は経営改革などにもつながるため、経営層からのコミットメントが特に重要ですが、知識不足により浸透に至らないのが現状です。
クラウドなどのサービスを使いこなせない
DXの成功には、データ収集と活用が重要な要素です。しかしクラウドなどのサービスを使いこなせなければ、膨大な量のデータを活用することは困難です。また既存システムから脱却できないことから、DXが進まない企業も存在します。
最新のビジネス知識が浸透していない
ビジネスの変革を認識していない、または伝統的な手法に固執するあまり、新しい取り組みに抵抗を感じている企業も。特に経営層の価値観やビジネス情報をアップデートしないことが、企業全体のDXへの意識を低下させる結果となっています。
予算が厳しい
DXの重要性は認識していても、先進技術や新しいシステムには莫大なコストが必要になるため、投資が行えずにいる現状もあります。大企業と異なり、資本の少ない中小企業にとっては大きな課題と言えるでしょう。
なぜ中小企業こそDXを推進すべきなのか
中小企業にとってDXの推進は容易なことではありませんが、一方で中小企業だからこそ取り入れるべきとも言われています。その理由をいくつか挙げていきましょう。
生産性・業務効率を上げるため
まずIT技術を導入することにより、中小企業の課題とされている「人手不足」を補うことができます。事業維持や収益向上を図るためには、人的リソースの確保・維持が大切です。またワークライフバランスと働きやすい環境を整備するためも、業務の自動化・効率化が必要不可欠と言えるでしょう。
企業競争力を上げるため
今日のビジネスは、テクノロジーによって世界的な規模で新しいサービスが誕生しています。中小企業が海外企業の日本進出や新しいビジネスモデルに負けない力をつけるためには、データのデジタル化と活用が不可欠で、変化する消費行動をキャッチアップしていくことが重要です。
節税のため
2021年より、政府はDX促進を目的に、ITやIoT、クラウドなどのサービスを導入する中小企業に対し、特別償却(30%)または税額控除(3%・5%)の措置を行っています。DXに投資することで節税につながり、中小企業の負担を軽減します。
コスパの良いDXツールが出てきているため
DX推進の取り組みが促進されるなかで、低コストで利用できるシステムやツールが誕生しています。リスクを抑えた運用が可能になり、中小企業にとっては大きなチャンスと言えるでしょう。
中小企業のDX化成功事例5選
山口製作所・ものづくり企業の独自システム開発
金属プレス加工・金型製造業を行う同社は、1968年創業。現在でも従業員28名という中小企業で、「ものづくり」に注力するため、1980年代から間接業務を効率化する取り組みを行ってきました。納品書作成システムから始め、一度の手入力で在庫管理、受発注処理なども行える独自の生産管理システムを開発しました。
また、QRコードを使用して受注データを呼び出し、「誰が、どの機械を使って、何を作る」かを表示するシステムを作り、1人1人の作業の進捗と受注案件ごとの管理も行えるようになっています。
木幡計器製作所・業務効率化とビジネスモデル創出を実現
木幡計器製作所は、圧力計メーカーです。現場で計器を確認する人材が不足していたことから、IoTを導入し圧力計のメンテナンスを自動化する取り組みに着手しました。そして遠隔での監視が行える「IoT 圧力計」を開発したのです。
また受注が下降していたことから、医療用測定機器の開発にも参画し、他社との差別化を図っています。業務効率化と新たなビジネスモデルの創出を果たした成功事例と言えるでしょう。
三友製作所・若手主導でIoT化を実現
三友製作所は、医療用分析機器関連、電子顕微鏡関連製品、半導体故障解析用ツールなどを製造しています。厳しくなる市場競争に危機感を持ち、新しい生産管理システムの取り組みを行うことになりました。
そこで、現場の若手従業員を中心に社内にある生産設備をIoT化し、4つの生産拠点の設備稼働状況を経営層が可視化できる仕組みを構築。また、蓄積された工作機械のデータから、稼働状況の報告や予実比較などが行えるようになり、作業改善に役立てています。これにより、設備の稼働率は従来の25%アップに成功しました。
株式会社 IBUKI・情報資産を活用した新たなビジネス展開
株式会社 IBUKIは、射出成形用金型の設計・製造を行っている会社です。長い業績不振に苦しみ、「社員以外はすべて変える」と業務見直しとビジネスモデルの改革の取り組みに着手しました。
デジタル化に取り組むなかで、同社のベテラン職人の頭にある知識や情報を収集し、その仕組みやノウハウが資産になるのではないかと考え、エンジニアリングサービスとして外販を始めました。将来的には、金型製造事業との2本柱で事業展開をしていくとしています。
株式会社ヒサノ・データ分析によるビジネスモデル改革
株式会社ヒサノは物流業で、重い商品や高価で精密な機材の輸送を行っています。同社はビジネスのデジタル化をチャンスととらえ、人、車、倉庫、データなどの保有資源、顧客とのやりとり、協力会社との連携による業務などから得られるデータを蓄積・分析することで、業務プロセスの改善、ドライバーの能力向上、社員の働き方改革などに活用しています。
また、Webデータを解析して顧客ニーズを把握し、サービスの開発も行っています。
株式会社TATAMISER・アプリ作成で海外注文処理も効率化
畳を販売する株式会社TATAMISERは、国内の畳の使用が減少していることから、業績の低下に苦しんでいました。一方で米国や中東、東南アジアなどからの需要が高まり、販路拡大を図ります。そのなかで、ECサイトから注文処理を効率化する見積もり作成アプリを開発。海外の顧客対応も、ローコード開発ツールを活用して自ら開発しています。
現在では、海外の高級ホテルの内装や個人使用まで、幅広く注文を受けるようになりました。
まとめ
ハードルが高いと感じられることの多いDXですが、多くの中小企業で業務効率化や差別化を図る取り組みが行われています。
業務改革には、職場の現状を洗い出し、分析することが大切です。具体的なDXの方向性を見いだすためには、信頼のおけるITパートナーを見つけて、しっかり相談するようにしましょう。
(画像は写真ACより)
この記事を書いた人
KJ@DXコラム編集長
エンジニア出身で現在は現在は営業窓口全般を担当しています。 お客様とのファーストタッチのタイミングからスピーディーに技術的な原因とその対応を行います。 DXの取組に興味を持たれたお客様と一緒になってゴールまで走り抜ける経験を2025年まで培っていきたいと思っています。 このコラムで2025年までの軌跡をお客様と作っていければと思っております
関連記事
2022.12.20
変化の早い市場で競争力を強化するためには、データやデジタル技術を活用し、新しい価値を生み出すDXが必須と言われています。…