2023.04.11
ノーコード開発のメリットとデメリット、代表的なサービスを5つ紹介
最新の技術トレンドのひとつにノーコード開発があります。プログラミングの知識がなくてもアプリを開発できるメリットがある反面、自由度がないデメリットもあります。ノーコード開発について解説するとともに、代表的な5つのサービスを紹介します。
ノーコード開発とは
ノーコード(NoCode)開発は、コードの記述を必要とせずにアプリを開発する手法です。あらかじめ用意されている機能のブロックを、ドラッグ&ドロップなどによってつないでアプリを組み立てていきます。GUI(グラフィックユーザーインターフェース)の視覚的な操作性を備えていることが特徴です。
一般的にアプリやWebサービスを開発する際にはプログラミングの知識が必要ですが、マウス操作によってアプリが開発できるため、プログラミングの知識を必要としません。このようにノーコード開発は、DX推進に大きく貢献します。
ノーコード開発が注目されるようになった背景から、詳しく解説していきましょう。
なぜノーコード開発がDXで注目されるのか
ノーコード開発が注目されている最大の要因は、IT関連の人材不足といえるでしょう。
これまで開発者は、開発言語を習熟した上でプログラミングを行ってきました。しかし、技術変化のスピードが加速するにつれて、しっかり言語を学んだ開発者を待っていては人材不足を埋められない状況になりました。開発言語自体のトレンドも変化するため、せっかく習熟した知識やノウハウが陳腐化したり、常に学び直しとアップデートが必要になったり、開発者自身にも変化が求められます。
このような背景から、言語やコードを記述する知識がなくてもシステムを構築できるノーコード開発が注目されるようになったのです。
業務が複雑化したことも、ノーコード開発が注目されている要因のひとつです。複雑化した業務をヒアリングして、現場に最適なシステムを構築するには、高度なコンサルティングスキルが求められます。したがって、それぞれの部門の業務に熟知した社員がシステムを開発できるようになれば、開発のための時間もコストも削減できます。
業務部門の担当者がリスキリングによって、ローコード開発ツールを使って業務アプリを開発できるようになることは、人材不足の解消とともに企業のDX推進には大きなメリットになります。
ノーコード開発とローコード開発の違い
ところで、ノーコード開発とともにローコード(LowCode)開発もあります。ローコード開発ツールでは、一部のコードを記述して開発します。
ノーコード開発は誰でも簡単にアプリができるメリットがある反面、用意されたパーツの機能しか使えない制約があります。一方、ローコード開発の場合は、開発者の裁量によって自由に機能を実装することが可能です。汎用性と拡張性が高く、既存のシステムとの連携しやすいメリットがあります。
しかしながら、ノーコードとローコードの開発ツールは完全に分かれている状態とはいえません。たとえば、サイボウズの業務効率化ツール「Kintone(キントーン)」は、ノーコードとローコードの両側面を持ち合わせています。
ノーコード開発で作成したアプリに対して「もっと業務に合わせた自動化ができないか?」というように、カスタマイズが必要になる場合があります。また、最初から高度な機能が必要であれば、ノーコード開発では求めている要件を実現できないかもしれません。
したがって、要件に合わせて、ローコード開発ツールあるいは時間とコストをかけて本格的に開発する選択を検討すべきです。
ノーコード開発のメリット
ローコード開発ツールとの違いの中で触れましたが、あらためてノーコード開発ツールのメリットを整理すると、主として次の3つがあります。
- プログラミングの知識が不要
- 開発時間の短縮
- 開発コストの削減
プログラミング言語やコーディングなどの知識なしに開発できることが、ノーコード開発ツールの大きなメリットです。ツールによっては豊富なテンプレートが用意されています。開発チームを組んでヒアリングしながら設計するときの時間、手間、コストを削減できます。
ノーコード開発のデメリット
一方、ノーコード開発の主なデメリットは次の3つです。
- 自由度や拡張性が低い
- 大規模なシステム開発には向かない
- プラットフォームに依存する
プログラミングの知識がなくても開発できますが、機能が限定されていることから自由度や拡張性が低いデメリットがあります。また、大規模なシステム開発には向きません。
多くのノーコード開発ツールはクラウド上で提供されています。プラットフォームへの依存性が高いこともデメリットです。プラットフォーム上のサービスが終了すると使えなくなり、利用していたアプリは最初から作り直しになります。
現在、ノーコード開発の代表的なプラットフォームの多くは、海外のスタートアップが運営しています。サービス停止を含めてトラブル発生時のリスクを考慮しておくことが必要です。
ノーコード開発の対応分野
ノーコード開発が対応する分野には次のようなものがあります。
- 業務効率化
- アプリ開発(モバイルアプリ、Webアプリを含む)
- ECサイト構築
- Webサイト構築 など
業務効率化としては、ZapierやIntegromatなどの自動化ツールが注目されています。さまざまなWebアプリを連携して、ワークフローの自動化が特長です。たとえばGoogleフォームからの問い合わせをメールに自動送信したり、内容をデータベースに格納したり、日常的な作業の効率化を可能にします。
アプリ開発のためのノーコード開発ツールには、Bubbleのような開発できるアプリの幅が広いものから、モバイルWebアプリに特化して簡単に使えるGlideなどが代表的です。また、ECサイトやWebサイトを構築するためのノーコード開発ツールは、ノーコードが注目される前から使われていたものがあります。
代表的なノーコード開発のサービス5選
対応分野の解説で一部を紹介しましたが、さまざまな分野のノーコード開発のサービスから、代表的な5つをピックアップして概要をまとめます。
Kintone(キントーン)
株式会社サイボウズが提供する業務改善プラットフォームです。開発の知識がなくても、クラウド上でさまざまな業務に合わせたアプリを簡単に作成できます。部署や業種ごとに100種類ものサンプルアプリが用意され、ExcelやCSVのデータを読み込むだけで使えることが特長です。トライアルは無料で利用できるほか、ライトコースとスタンダードコースによるサブスクリプション(年額)が用意されています。
参考:https://kintone.cybozu.co.jp/
Magic xpa(マジック エックスピーエー)
マジックソフトウェア・ジャパン株式会社が提供する、基幹システムを迅速に構築できるローコード開発ツールです。国内45,000社以上の企業において、生産管理、販売管理、財務会計、人事システムなどの業務システム開発に使われています。独自のXML構造のアプリケーション・メタデータを生成し、高速な開発と柔軟なカスタマイズが可能です。
参考:https://www.magicsoftware.com/ja/app-development-platform/xpa/
Shopify(ショッピファイ)
ネットショップをノーコードで開発できるEC事業者向けプラットフォームです。世界規模で使われています。ダウンロードコンテンツを含めた商品管理機能、在庫の追跡や調整などの機能があり、テンプレートを使って優れたデザインのネットショップを構築することができます。配送指定や商品レビューなどを可能にする拡張機能もあります。ベーシック、スタンダード、プレミアムの3つの有料プランが用意されています。
AppSheet(アップシート)
Googleが提供するノーコード開発ツールで、ビジネスプロセスを自動化します。データソースとしてGoogle スプレッドシートのほか、 Salesforce などさまざまなデータベースと連携できることが特長です。Google AI と機械学習を使って、学習モデルの予測による高度なアプリを作成できます。PCのほかモバイル端末のアプリ開発にも対応しています。無料で利用できるほか、スターターやエンタープライズ向けなどの料金プランが用意されています。
参考:https://cloud.google.com/appsheet?hl=ja
楽楽精算
株式会社ラクスの提供するクラウド型の経費精算システムです。交通費などの経費の精算機能を備え、インボイス制度や電子帳簿保存法に対応しています。汎用ワークフロー機能を備え、レイアウトや項目を組み合わせて自由度の高い承認フローを構築できます。会社ごとに異なる書類申請の流れをシステム上で再現可能です。
参考:https://www.rakurakuseisan.jp/
ノーコード開発ツールを選定するときのポイント
まず、何をやりたいのか目的や用途を明確にして情報を収集し、最適なプラットフォームを見極めることが大切です。
前提として「ITは魔法の杖ではない」認識が必要です。ITが万能ではない以上、機能を限定したノーコード開発ツールにはさらに制約があります。多くのノーコード開発ツールは、Webサイト構築やモバイルアプリ開発など用途を限定しています。自社の目的や用途を実現する機能があるか確認し、無料のトライアルを利用するとよいでしょう。
海外のノーコード開発ツールは、サポートやコミュニティをチェックする必要があります。活用事例などがあれば、参考にして実践的な使い方を学べます。
自社内にある程度スキルのある人材、あるいはリスキリングを行ってノーコード開発ツールの活用にチャレンジするのであれば、DX推進の人材育成も含めて、中長期的な先行投資の考え方が必要です。
まとめ
ノーコード開発ツールは業務アプリやECサイト構築だけでなく、AIや3DCG制作にも浸透しつつあります。ドラッグ&ドロップでアプリ開発を可能にすることは、DX推進を担う人材の裾野を拡げる意味はあります。しかし、ローコード開発プラットフォームの限界も知っておくべきでしょう。目的や用途に最適なツールを選択するとともに、高度なDX推進に対応できる自社内の人材育成、さらに外部パートナーとの連携をおすすめします。
この記事を書いた人
KJ@DXコラム編集長
エンジニア出身で現在は現在は営業窓口全般を担当しています。 お客様とのファーストタッチのタイミングからスピーディーに技術的な原因とその対応を行います。 DXの取組に興味を持たれたお客様と一緒になってゴールまで走り抜ける経験を2025年まで培っていきたいと思っています。 このコラムで2025年までの軌跡をお客様と作っていければと思っております
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