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  3. 経済産業省が公表した、企業がDXを推進するための指針「デジタルガバナンスコード3.0」とは?DX認定制度との関連性も含め徹底解説

日々進化を続けるデジタル社会において、企業が持続的な成長を遂げ、競争力を維持するためには、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の推進が不可欠です。

(※以下「DX」に統一します。)

そんな中、経済産業省が2020年10月に発表した「デジタルガバナンス・コード」は、企業がDXを効果的に取り組むための指針となっています。

そして、2024年9月には最新の改訂版である「デジタルガバナンス・コード3.0」が公表され、大きな注目を集めています。

本記事では、「デジタルガバナンス・コード」とはどのようなものなのか基本的な概要に加え、最新の改訂版である「デジタルガバナンス・コード3.0」でどのような変更がされたのか、DX認定制度との関連性も含め分かりやすく解説していきます。

参考:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0 ~DX経営による企業価値向上に向けて~」

目次

デジタルガバナンス・コードとは?

近年、デジタル技術の発展とグローバル化の進展に伴い、日本企業にもDXの推進が求められています。

しかし、DXの必要性を認識しながらも、多くの企業が思うようにDXを進められていないのが現状ではないでしょうか。その背景にはレガシーシステムが足かせとなっていて刷新に踏み切れない、デジタル人材不足など複数の要因が考えられます。

デジタルガバナンス・コードとは、こうした日本企業の現状を打破すべく、急速なデジタル化が拡大する市場・社会経済に対応するために経済産業省が策定した、企業が自主的にDXを推進するために実践すべき事柄をまとめたガイドラインです。

このガイドラインは、大企業や中小企業といった企業規模、法人・個人事業主といった形態を問わず、すべての事業者を対象としています。

デジタルガバナンス・コードでは以下の領域を「基本的事項」とし、方針が示されています。

経営ビジョンとビジネスモデルの策定

DX戦略の策定

DX戦略の推進

成果指標(KPI)の設定

ステークホルダーとの対話

こちらの概要については、後の項目「デジタルガバナンスコードの全体像 -DX経営に求められる3つの視点と5つの柱について-」で詳しく解説していきます。

また、経済産業省より中堅中小企業向けに「デジタルガバナンスコード 実践の手引き」として、より具体的なガイドラインが提供されていますので、併せてご覧ください。

参考:経済産業省「中堅中小企業等向け「デジタルガバナンスコード」実践の手引き」

DX認定制度について、デジタルガバナンス・コードとの関連性

DX認定制度ロゴマーク

DX認定制度とは、「デジタルガバナンス・コード」と同様に経済産業省が設けた、国が企業のDX推進に対する取り組みを評価し、認定することで企業のイメージアップを目的とする制度です。

この制度は「デジタルガバナンス・コード」と密接に関連しており、DX認定制度の対象になるには「デジタルガバナンス・コードの基本事項に対応している」ことを条件として明記されています。

「デジタルガバナンス・コードの基本事項」に対応している企業を国(経済産業省)が審査し、要件を満たしていれば「DX認定事業者」として認められます。

DX認定を受けることは、「自社がDXに積極的に取り組む企業」であることを国に公的に証明してもらうことを意味します。さらに、認定された企業は、DX認定制度のロゴマークを使用することができます。

そのため、DXを推進する企業や、自社のDX推進への姿勢や実績を広くアピールしたい企業にとって、DX認定の取得は大きな目標となるでしょう。

このように、DX認定制度を取得するためには、デジタルガバナンス・コードを正しく理解し、対応することが不可欠になります。

参考:経済産業省「DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第三十一条に基づく認定制度)」

デジタルガバナンスコード3.0への改訂による変更ポイント

今回のデジタルガバナンスコード3.0は2022年に一度見直された「デジタルガバナンスコード2.0」に続く二度目の改訂となっています。

経済産業省が公表している「デジタルガバナンスコード3.0改訂のポイント」を踏まえ、主な改訂のポイントをご紹介します。

参考:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0 改訂のポイント」

デジタルガバナンスコード3.0の改訂ポイント

経営者へ向けたメッセージの強化

デジタルガバナンスコード3.0の改訂で「DX経営による企業価値向上に向けて」と副題が付けられました。全体的に経営者へ向けたメッセージが多く追加され、経営者へさらなるDXの取り組みを促すことを重視した内容になっている。

具体的には、DX推進の重要性などを記した序文の大幅な見直しに加え、デジタルガバナンス・コードの全体像が改めて整理され、「DX経営に求められる3つの視点」が追加されました。

例えば、デジタルガバナンスコード3.0の序文では、

「経営者が積極的に関与することが極めて重要であり、経営者は「DXに投じる資金はコストではなく、価値創造に向けた投資である」、
「DX推進はIT部門ではなく、経営陣(経営者や執行役員等)や取締役会の役割である」と考え、「自社のDX戦略について、社内外のステークホルダーと積極的な対話を行う」ことが求められる。」

など、経営者に主体的な取り組みを求めるメッセージが記載されております。

経営におけるデータ活用やデータ連携の重要性を強調

デジタルガバナンスコード3.0の提示する「5つの柱」の1項目である「経営ビジョンビジネスモデルの策定」では

「企業は、データ活用やデジタル技術の進化による社会及び競争環境の変化が自社にもたらす影響(リスク機会)も踏まえて、経営ビジョン及び経営ビジョンの実現に向けたビジネスモデルを策定する。」

とデータ活用についての言及がされています。

これらの項目が増えたことでDX認定のハードルが上がったことと同時に、「デジタルガバナンスコード」の重要性、需要が上がったと考えられます。

DX人材に関する内容の強化

デジタルガバナンスコード3.0の提示する「5つの柱」の1項目である「3.DX戦略の推進」のうちに「3-2. デジタル人材の育成確保」として一つの項目が追加されました。

DXの推進にはデジタルに関して求められるスキルをもったDX人材の育成、確保に大きく依存しており、そのための取り組みが企業に求められています。

セキュリティ対策に関する言及の強化

企業のDX推進に伴い、サイバーセキュリティリスクの高度化・複雑化が懸念されています。

これに対応するために、デジタルガバナンスコード3.0の提示する「5つの柱」の1項目である「3.DX戦略の推進」のうちに「3-3. ITシステムサイバーセキュリティ」として一つの項目が追加され、システム監査やセキュリティ監査など第三者監査やサプライチェーン保護に向けた対策など具体的な対応内容が記載されました。

デジタルガバナンスコードの全体像            -DX経営に求められる3つの視点と5つの柱について-

デジタルガバナンス・コード3.0では、経営者が企業価値の向上を目指したDX経営を実行するに当たって、「3つの視点」を意識しつつ、「5つの柱」について取り組みを進めることが重要であるとされています。

参考:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0 ~DX経営による企業価値向上に向けて~」

デジタルガバナンス・コード3.0の全体像

デジタルガバナンスコード3.0が提示する「3つの視点」

経営ビジョンとDX戦略の連動

・経営環境が急速に変化する中、持続的に企業価値を向上させるためには、経営ビジョンと一体となり、それを支えるDX戦略を策定し実行することが不可欠です。

・DX戦略の策定に当たっては、経営者が主導し、経営ビジョンとの結びつきを意識しながら、重要なデジタル課題に対して具体的なアクションやKPIを設定する必要があります。

As is – To beギャップの定量把握・見直し

・経営ビジョンの実現を妨げるデジタル課題を特定し、課題ごとにKPIを活用して目指すべき姿(To be)と現在の姿(As is)のギャップを定量的に把握することが必要です。

把握した結果をもとに、DX戦略と経営ビジョンの整合性を判断し、DX戦略を継続的に見直すことが重要です。

企業文化への定着

・持続的な企業価値の向上を支える企業文化は、固定的なものではなく、DX戦略の実行を通じて変革し醸成されるものです。

そのため、DX戦略の策定段階から目指す企業文化を見据えて進めることが求められます。

デジタルガバナンス・コード3.0が提示する5つの柱

デジタルガバナンス・コード3.0では、DX経営を実現するための「5つの柱」を提示しています。それぞれの柱には、企業が取り組むべき「基本的事項」と、DX認定制度における「認定基準」が設定されています。「5つの柱」における基本的事項については以下の通りです。

1.経営ビジョン・ビジネスモデルの策定

【柱となる考え方】

・企業は、データ活用やデジタル技術の進化による社会及び競争環境の変化が自社にもたらす影響(リスク・機会)も踏まえて、経営ビジョン及び経営ビジョンの実現に向けたビジネスモデルを策定する。

【認定基準】

・データ活用やデジタル技術の進化による社会及び競争環境の変化の影響も踏まえた経営ビジョン及びビジネスモデルの方向性を公表していること。

2.DX戦略の策定

【柱となる考え方】

・企業は、データ活用やデジタル技術の進化による社会及び競争環境の変化も踏まえて目指すビジネスモデルを実現するための方策としてDX戦略を策定する。

【認定基準】

・データ活用やデジタル技術の進化による社会及び競争環境の変化の影響も踏まえて策定したビジネスモデルを実現するための方策として、DX戦略を公表していること。

3.DX戦略の推進

3-1.組織づくり

【柱となる考え方】

・企業は、DX戦略の推進に必要な体制を構築するとともに、外部組織との関係構築・協業も含め、組織設計・運営の在り方を定める。

【認定基準】

・DX戦略において、DX戦略の推進に必要な体制・組織に関する事項を示していること。

3-2.デジタル人材の育成・確保

【柱となる考え方】

・企業は、DX戦略の推進に必要なデジタル人材の育成・確保の方策を定める。

【認定基準】

・DX戦略において、DX戦略の推進に必要な人材の育成・確保に関する事項を示していること。

3-3.ITシステム・サイバーセキュリティ

【柱となる考え方】

・企業は、DX戦略の推進に必要なITシステム環境の整備に向けたプロジェクトやマネジメント方策、利用する技術・標準・アーキテクチャ、運用、投資計画等を明確化する。

・経営者は、事業実施の前提となるサイバーセキュリティリスクに対して適切な対応を行う。

【認定基準】

・DX戦略において、ITシステム環境の整備に向けた方策を示していること。

・DX戦略の実施の前提となるサイバーセキュリティ対策を推進していること。

4.成果指標の設定・DX戦略の見直し

【柱となる考え方】

・企業は、DX戦略の達成度を測る指標を定め、指標に基づく成果についての自己評価を行う。

・経営者は、事業部門(担当)やITシステム部門(担当)等とも協力し、デジタル技術に係る動向や自社のITシステムの現状を踏まえた課題を把握・分析し、DX戦略の見直しに反映する。

・(取締役会設置会社の場合)取締役会は、経営ビジョンやDX戦略の方向性等を示すにあたり、その役割・責務を適切に果たし、また、これらの実現に向けた経営者の取組を適切に監督する。

【認定基準】

・DX戦略の達成度を測る指標について公表していること。

5.ステークホルダーとの対話

【柱となる考え方】

・企業は、経営ビジョンやビジネスモデル、DX戦略、DX戦略の推進に必要な各方策、成果指標に基づく成果について、「価値創造ストーリー」として投資家をはじめとした適切なステークホルダーに示す。

・経営者は、DX戦略の実施に当たり、ステークホルダーへの情報発信を含め、リーダーシップを発揮する。

【認定基準】

・経営ビジョンやDX戦略について、経営者が自ら対外的にメッセージの発信を行っていること。

まとめ

今回は、2024年に改訂されたデジタルガバナンス・コード3.0について解説しました。

日々進化するデジタル社会において、DXの推進は企業の持続的成長と競争力強化につながる戦略的な取り組みです。

デジタルガバナンス・コードでは、DX戦略の策定やデジタル人材の育成など、DX推進に必要な具体的な柱や方策について分かりやすく示されています。

経営層を中心にデジタルガバナンス・コードを理解し、実践していくことで自社のDX化を進めていきましょう。

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