2023.04.11
企業がクラウドサービスを上手く利用する方法とは 利用しない理由と成功する利用方法
近年、多くの企業がクラウドサービスを利用してDXを促進させています。また、企業だけでなく多くの人にも利用されており、今ではクラウドが生活に必要不可欠な存在となっています。そんな中でも、クラウドを上手く利用できていない企業もあり、DXがなかなか進まない企業が多く存在しています。この記事ではそもそもクラウドとは何なのか、クラウドを利用している企業の現状、クラウドをどのように活用すれば成功するのか4つの観点から考察します。
クラウド(クラウドサービス)とは
クラウドとは、パソコンやスマートフォンなどといった端末をインターネットに接続することでその先にある様々なサービスを端末内にインストールせずに利用することができるようにする仕組みのことです。
インターネットのイメージを雲を使って表現する、雲のようにどこにあるかわからないサービスを利用するなどの様々な理由からクラウドと名付けられました。
クラウドを利用することによって、インターネットに接続ができればどんな端末でも誰でも同じサービスを利用することが出来ます。
そのため、自社でハードウェアやソフトウェアを所有する必要がなくなり、クラウドは利用した分だけ費用が掛かる仕組みのため、コストを抑えやすく出来ます。
SNS、電子メール、ファイル保管等のように、クラウドにはさまざまな種類があり、用途に合わせて利用することができ、利用することで業務効率が上がりDXが促進されます。
また、最近ではクラウドを利用した機械学習やAI(人工知能)の開発、自然現象や経済等のサステナビリティの実現、パブリッククラウド(企業、個人などの誰でも利用できるように提供しているクラウド)とプライベートクラウド(企業内、個人内のみで利用することができるクラウド)を両立して利用するハイブリッドクラウドの活用等が登場し、多種多様な利用がされています。
クラウドが誕生した歴史
そんなクラウドですが、誕生したのは最近のことです。
1995年に登場したWindows 95によって、世界中の多くの人がインターネットを利用できるようになりました。
それにより、インターネットの利用方法が変わっていき、ウェブアプリケーションサービスの登場によって生まれたインターネットビジネスという新たなビジネスモデルの誕生、利用者の増加に伴い発生した使用するデータ量の増加によって、今までにない概念が必要だと感じてクラウドが誕生しました。
初めてクラウドが誕生したのは1997年で、南カリフォルニア大学のラムナト・チェラッパによりクラウドという概念が提唱されました。
その後、2004年に検索エンジンでおなじみのGoogleが上場し、2006年に当時のCEOであるエリック・シュミットが「サーチエンジン戦略会議」の中で、クラウドについて発言したことによって、世界中にクラウドという言葉が広まりました。
その後、AmazonやMicrosoftといった様々な企業がクラウドサービスを提供し、現在ではたくさんのクラウドサービスが生まれて、クラウドを利用するのが当たり前の時代となりました。
クラウドの3つの種類
クラウドサービスには多くの種類がありますが、クラウドを大きく分けた場合、以下の3つの種類に分類することが出来ます。
- SaaS(Software as a Service)
- PaaS(Platform as a Service)
- IaaS(Infrastructure as a Service)
SaaSは、サーバーからソフトウェアまでのすべてのサービスを提供者が管理しているもので、ユーザーはソフトウェアを利用することが出来ます。そのため、ソフトウェアがユーザーに上手く合えば低コストで有効に利用できる一方、拡張性が低いのでユーザーと上手く合わない場合にソフトウェアをカスタマイズするのが難しくなります。
PaaSは、サーバーからミドルウェアまではサービス提供者が管理をし、ユーザーはソフトウェアを管理するアプリ開発向けのクラウドサービスです。SaaSに比べて拡張性が上がり、ユーザーの好みに合わせて利用することが出来ますが、PaaSはデベロッパー向けのクラウドのため専門知識が必要となり難易度がSaaSより高くなります。
IaaSは、サーバーのみ提供者が管理をし、ハードウェアやOSといったサーバー以外のすべてをユーザーが管理します。PaaSに比べて、拡張性が高く自由に利用することができる一方で、サーバーの知識などPaaSよりも必要な知識が増え、ユーザーが抱える責任範囲が広くなるため保守運用を正しい方法で確実に行う必要があります。
このように、クラウドには大きく3つの種類が存在し、SaaS、PaaS、IaaSになるにつれて、自由度が上がり拡張性も上がりますが、その分専門知識と責任を抱える必要があります。
どのクラウドの種類を利用するのかは、利用目的に合わせて慎重に選定することが大切になります。
企業のクラウド活用の現状について
そんなクラウドですが、世界中で利用されている中、日本ではIT化が進んでいないことで問題となっています。
そこで、実際に日本ではどのくらいの企業が利用しているのか、またどんな企業が利用していてその目的は何なのかを調査してみました。
クラウドを利用している割合
総務省が出している「情報通信白書 令和5年版」によると、クラウドサービスを利用している企業は7割を超えており、年々増加しています。
産業別での利用割合を見てみると、情報通信業と金融・保険業が多く、その他の企業では6割を超えていて、半数以上の企業はクラウドを利用していることが分かります。
資本金別で見ると、資本金が高いほど利用率が高く、50億以上では約99%に対して1000万円以下では43%と約半分以下の利用率なっており、中小企業ではまだまだクラウド活用できていない企業があることが分かります。
クラウドを利用する理由とそれによる効果
企業がクラウドを利用する理由として、「場所、危機を選ばずに利用できるから」、「資産、保守体制を社内に持つ理由がないから」、「安定運用、可用性が高くなるから」という理由が多く、クラウドの特徴であるコスト軽減、保守運用のしやすさが関連していることが分かります。
クラウドを利用することによって効果を得たと思った企業が約9割となっており、ほとんどの企業がクラウドを利用することによって効果があると実感しています。
企業がクラウドを活用しない理由について
そんな利用状況でしたが、上記にあったようにクラウドを利用していない企業が約3割で且つ、資本金が少ない企業ほど利用者率が低いのが現状です。
そこで、企業がなぜクラウドを利用しないのかその理由について調査してみました。
1,クラウドの導入目的が分かっていない、導入しなくても問題ない
そもそもクラウドを導入する目的がない企業やクラウドを活用しなくても業務に問題ない企業が少なからず存在しています。
どこのどの業務でクラウドを利用すると従来よりも業務効率が良くなり、業務問題を解決できるのかを明確に分かっておらず、クラウドを導入しない企業がいます。
また、オンプレミス(サーバーやソフトウェア等を自社で管理、運用すること)のみで完結してしまう業務の場合、クラウドをそもそも利用しなくても業務に問題ないこともあります。
2,セキュリティ面が心配
SaaSやPaaSでは半分以上の箇所をサービス提供者が責任を持ち、インターネット上に社内データを補完するため、オンプレミスよりもセキュリティが弱くなってしまい、情報漏えい等が起こる可能性があります。
IaaSではサービス提供者が持つ責任は少なく提供者によって情報漏えいが起こる可能性は低いですが、その代わりにユーザーが持つ責任が増えてしまうので、正しいセキュリティ対策をしなければ情報漏えいが起きてしまうこともあります。
そのため、企業によってはセキュリティ面においてクラウドを利用することがリスクであり、クラウドを利用することが出来ない場合があります。
3,コストが高くなってしまう
基本的にはクラウドの方がオンプレミスよりもコストが低くなることがありますが、場合によってはクラウドサービスへ移行すると既存のオンプレミスよりもコストがかかってしまう場合があります。
クラウド利用するソフトウェアのライセンス料等の価格、クラウドを利用するためのインターネット環境の構築等といった企業によって必要なコストが異なり、クラウドに移行する方がかえってコストがかかってしまい失敗してしまう場合があります。
4,クラウドの知識不足
クラウドを利用するにはネットワークやセキュリティといった知識が必要となり、知識を持っている人材の確保が中小企業では難しく、クラウドを上手く利用することが出来ないことがあります。
SaaSの場合、アプリケーションをユーザーが利用するので、専門的な知識がなくても使い方とセキュリティを理解することでほとんど利用することが出来ます。
しかし、PaaSやIaaSといった場合、IT技術の知識と経験が必要となるため、クラウドに移行する難易度が更に高くなってしまいます。
企業がクラウドを上手く活用するには
先ほどの理由からクラウドを利用しない企業がいますが、クラウドを利用することによって効果を得たと思った企業が約9割と、ほとんどの企業は効果があると実感しており、クラウドを利用することによって効果が得る可能性がとても高いことが分かります。
そのため、クラウドを利用していない企業はクラウドを利用することによって効果を実感することが出来るようになり、結果として業務がより良くなる可能性が高くなる可能性が高くなります。
しかし、先ほどのクラウドを利用しない原因によって利用が出来ていない企業が存在しています。
そこで、実際にクラウドを活用する時にどんな点に注目して移行すると上手く活用できるのか調査してみます。
1,クラウドの導入目的を明確にする
企業がクラウドを利用するにあたって、どんな目的で利用するのかを明確にする必要があります。
現状のどの業務に問題があり、どんなクラウドサービスを利用し、それをいつ誰が利用するのかといった「5W1H」を使い、クラウド利用の目的を明確にすることで、ただクラウドを使って有効活用できずに失敗することをなくします。
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Who(誰が)
- What(何を)
- Why(なぜ)
- How(どのように)
2,クラウドサービスの種類とコストを確認する
クラウドを利用する目的が明確になった後に、実際にどの種類のクラウドを利用して、どのサービスを利用するのかをしっかりと決めて選択する必要があります。
クラウドにはSaaS、PaaS、IaaSの3種類あるため、どの種類だったら利用することができ、決めた後にどのクラウドサービスを利用するのか決めなければなりません。
現在、クラウドサービスは多く存在しており、クラウドの利用目的と決めた種類に合ったクラウドサービスを決めなければ失敗してしまうことがあります。
また、クラウドサービスによってはコストが異なっているので、どれぐらい費用がかかるのかを明確にする必要があります。
3,セキュリティへの対策
クラウドを利用するにあたってデータを利用するのが必要不可欠となり、その安全を守るためにセキュリティ対策を念入りに行う必要があります。
データをクラウドで保持する関係でインターネット上に社内データを補完することになるので、情報漏えいが起こる可能性があります。
また、SaaS、PaaS、IaaSによって責任分界点が異なってくるのでユーザー側が責任を持つ範囲が増えるほどよりセキュリティに注目して対策を講じることが大切です。
パスワードの設定、他者からのアクセス制御、クラウドサービスの利用監査といった正しいセキュリティ対策をすることによって、企業が扱っているデータの安全性を上げることが出来ます。
また、企業の機密情報といったより重要度の高いデータの利用をクラウドでは行わずに、オンプレミスで行うといったクラウドで利用するデータの選別も行うことで、更に安全性を上げることが出来ます。
4,クラウドに詳しい人材の育成、確保
クラウドを利用するには専門的な知識が必要となるため、クラウドの知識と経験がある人材が必要となります。
SaaS、PaaS、IaaSになるにつれてより専門的な知識が必要になっていくため、より人材が必要になっていきます。
人材を募集することも方法の一つでもありますが、現在日本ではIT人材が不足していることもあり、人材募集が難しい現状です。
そのため、人材募集ではなく企業内の社員を育成する方法もあります。
クラウドに詳しい人による社内研修を実施するのが一番いい方法ではありますが、クラウドに詳しい人材がいない場合は、外部の講座への参加や動画コンテンツを活用することによって人材育成が出来ます。
最新のクラウドサービスの紹介
最後に、最近のクラウド活用は多種多様になってきており、それに伴って様々なクラウドサービスが誕生しています。
そこで、最近登場した新たなクラウドサービスについていくつか紹介していきます。
UMWELT(ウムベルト)
株式会社トライエッティングが提供している、ノーコードでAIによるデータ活用が出来るクラウドサービスです。
データ収集からAIモデリング、実装までの一連の流れをノーコードで作成することが出来ます。
また、売上予測や来店者数予測等といったAI予測を利用した様々なプラットフォームが用意されており、開発がしやすくなっています。
更に、UMWELTを導入した場合、専門家によるサポート、UMWELTの利用方法やAIといった講座の受講等のサポートが用意されています。
参考:https://www.tryeting.jp/umwelt/
SAP Cloud for Sustainable Enterprises(エスエーピー クラウド フォー サステナブル エンタープライズ)
SAP社が提供しているESGレポート作成、気候変動対策、循環型経済、社会的責任を管理し企業のサステナビリティを管理することが出来るクラウドサービスです。
近年話題になっているSDGsを企業がより取り組みやすくするために生まれたクラウドサービスです。
廃棄量や二酸化炭素等といった排出量の記録、職場環境の安全性や衛生面の管理、プラスチック等といった包装材の管理といった企業のサステナビリティを管理することが出来ます。
参考:https://www.sap.com/japan/sustainability.html
AWS Direct Connect(エーダブリューエス ダイレクト コネクト)
Amazonが提供しているクラウドサービスであるAWS(Amazon Web Services)と自社で持っているサーバーとプライベート接続することが出来るクラウドサービスです。
これにより、クラウド利用によって発生するセキュリティ面を強化することが出来ます。
例えば、社内の機密情報等といった絶対に漏れてはいけないデータは自社サーバーで管理を行い、それ以外のデータをAWSに持たせて利用することが出来ます。
参考:https://aws.amazon.com/jp/directconnect/
まとめ
クラウドは企業において多くの効果を与えて業務改善が行える一方で、クラウドを利用するには十分な準備と知識が必要となります。そこを疎かにしてしまうとクラウドを十分に活用することが出来ず、最悪の場合、企業に大きな悪影響を与えてしまうこともあります。そのため、企業で綿密に計画を立てて、クラウドサービスを利用するのか判断する必要があります。
この記事を書いた人
KJ@DXコラム編集長
エンジニア出身で現在は現在は営業窓口全般を担当しています。 お客様とのファーストタッチのタイミングからスピーディーに技術的な原因とその対応を行います。 DXの取組に興味を持たれたお客様と一緒になってゴールまで走り抜ける経験を2025年まで培っていきたいと思っています。 このコラムで2025年までの軌跡をお客様と作っていければと思っております
関連記事
2023.04.20
IT導入補助金は、DXを積極的に活用する企業に対してプロジェクトの成果を審査した上で交付される補助金です。通常枠(A・B…
2022.12.22
DX化、ICT化など、インターネットやIT技術を活用した企業戦略が進められています。その主な狙いは、データの利活用です。…