2023.04.11
テレワークが与える健康面の課題、中小企業で取り組むべきポイントとは?
テレワークは働き方の選択肢のひとつとして定着しました。中小企業においてもテレワークを導入している会社が多いのではないでしょうか。しかし、在宅勤務にはデメリットもあります。ストレスや運動不足から健康面に悪影響を与えるからです。ここではテレワークによる健康面の課題を挙げるとともに、その解決方法を解説します。
テレワークが与える健康面への影響と課題
仕事とプライベートの時間を切り分けにくいテレワークでは、労働時間が長時間化し、従業員の健康面に悪影響を及ぼす場合があります。
テレワークが健康面に与える課題には、大きく分けてメンタル不調と運動不足による2つの課題が考えられます。メンタルの不調は、仕事の進捗や結果を大きく左右します。運動不足の原因により発症する生活習慣病は、従業員の生活全体の質を低下させます。
経営者や職場のリーダーは、テレワークの影響を理解した上で、従業員の労働時間や健康の管理に留意すべきです。したがって、テレワークが健康面に与える影響と課題にはどのようなものがあるか、まず心と身体の2つの側面から整理します。
課題1:メンタル不調がもたらす不眠やうつ
従業員にとってテレワークの大きなメリットは、通勤時間のストレスがなくなることでしょう。ところが、自宅で仕事することにより新たなストレスが生じます。
テレワークによって生じるストレスには、物理的ストレスと心理的ストレスの2つがあります。物理的ストレスは、周囲がうるさくて仕事に集中できない、ビデオ会議がつながらないなど、作業環境が整備されていないことを要因としたストレスです。心理的ストレスには、自己管理をしなければならないプレッシャー、上司や同僚に気軽に相談できない孤独感などがあります。子どもの相手をしなければならなかったり、家事のために作業を中断したり、職場にはなかった新たなストレスも発生します。
結果として、生活のリズムが崩れて、不眠やうつなどのメンタル不調を生じがちです。本人が意識していない間に症状が進行していることがあり、早期発見および未然に発症を防ぐ対策が求められます。
課題2:運動不足による生活習慣病
通勤時間がなくなると、大幅に運動量が減ります。2020年4月、筑波大学大学院と健康機器メーカーのタニタは、テレワークによって1日の歩数が平均でおよそ3割減少したという調査結果を発表しました。
参考:テレワークで1日の歩数30%減少 運動不足による健康影響懸念
筋力の低下とともに、糖尿病や高血圧など生活習慣病の発症リスクが高まります。椅子に座り続けることによる肩こりや腰痛も考えられます。こうした身体面の不調は、個人の責任として一概に片付けられません。長時間労働を含めて企業の管理責任を問われるため、注意が必要です。
テレワークによる健康面の課題を解決する3つのポイント
テレワークから生じる健康面の課題は、従業員のセルフケアによる努力だけでは解決が困難です。したがって会社としてルールや仕組みづくりを徹底し、上司によるケアや環境の整備と支援を行い、さらに自社に最適化させることが大切です。
3つのポイントについて詳しく解説します。
ポイント1:ルールや仕組みづくりの徹底
まず企業側としてやるべきことは、ルールの徹底です。テレワークに関する社内ルールを作ります。
このとき、経営者やリーダーが「このチェックリストの項目を守るように」と押し付けるのではなく、それぞれの従業員に意見を求めて作り上げていくとよいでしょう。経営者は「健康面を重視したテレワークに取り組む」というメッセージだけ従業員に伝え、具体的なルールは自発的に決めさせます。管理者以外のリーダーを決めて、健康推進プロジェクトを立ち上げてもよいでしょう。主体的にルール作りに関わったという参加意識を持たせることによってルールの徹底が強化されます。
その上で外部講師を招いたメンタルヘルス研修などにより健康意識を高めます。また、ルールで制限できない残業を制限するためには、業務システムの利用時間を定め、時間外には使えなくするなど強制的な手段をとることも場合によっては有効です。
ポイント2:ラインケア、環境の整備と支援
次に従業員の健康を守るためのケアと支援を行います。上司と1対1で面談して行うケアはラインケアと呼ばれています。チャットやメールのような文字を中心としたコミュニケーションに加えて、ビデオ通話を活用すると効果があります。健康面の不調は顔色、表情、言葉使いなどに出やすいものです。ビデオを通じて非言語的なコミュニケーションに注意を払い、部下の健康状態を読み取り、変化に気づいてあげるようにします。
自宅のPCや通信環境が整備されていないのであれば、機器の貸与を検討すべきです。室内の環境についても、椅子や机、照明、エアコン、ディスプレイの明るさなどを確認して、問題があれば改善の方法を一緒に考えてサポートします。
グループウェアを活用して困ったことや悩んでいることを共有し、上司だけでなく同僚からサポートを受けやすく工夫することも解決方法のひとつです。さまざまなハラスメントに配慮しつつ、快適な環境づくりを行います。
ポイント3:改革に向けて柔軟に取り組むこと
テレワークの制度化や環境整備が先行すると、目的を見失う場合があります。そもそもテレワークの主な目的は生産性の向上です。したがって従業員に健康面に支障が出る働き方は逆効果といえます。
わずかな予算で最大の効果を出さなければならない中小企業では、スモールスタートで試験的にテレワークを導入して、作業効率やストレスなどを考慮した上でベストバランスを模索していくことが大切です。フルリモートではなく一部だけリモートにする、出勤日を設ける、一部のスタッフに在宅勤務を限定するなど、勤務形態を最適化するとよいでしょう。
中小企業の強みは、状況に合わせて迅速に方針を変えられる機動力です。定めたルールにこだわるのではなく、試行錯誤をしながら柔軟に取り組むことが大切です。
テレワークによる健康面の課題をITで解決する2つの方法
健康面の課題は、従業員からの自主的な報告を待っていると手遅れになる場合があります。といっても、部下ひとりひとりを見守ることは管理者の負荷が大きくなります。ITによる監視や管理の自動化を視野に入れておくことをおすすめします。
方法1:管理システムの導入
テレワーク管理専用のシステムを利用すると、WordやExcelなどのOffice、アプリケーション、Webブラウザやチャットなどを監視できるようになります。監視というと従業員には抵抗があるかもしれませんが、従業員のコンディションやパフォーマンス管理にも効果的です。特定の情報にはアクセスできないように権限を設定することも作業環境の整備として役立ちます。作業効率化や健康管理の目的だけでなく、セキュリティ対策としても重要です。
バーチャルオフィスのサービス「oVice」を使うと、出社や勤務の状態を可視化できます。自分のアバターを動かしてリアルタイムの音声会話で雑談ができるため、テレワークによる孤独感の解消としても評価が高いツールです。
方法2:健康状態のモニタリング
健康管理のアプリを使って、それぞれの従業員が健康状態をチェックすることを習慣化します。睡眠時間や質の管理、ウォーキングの距離や心拍数など運動習慣の管理などを導入して、常に健康に留意してもらうようにします。健康管理にはスマートフォンのアプリのほか、スマートウォッチのようなウエアラブルデバイス、椅子に設置するセンサーなど数多くの製品があります。
テレワークではありませんが、運輸業ではクルマのシートに取り付けたセンサーで交感神経と副交換神経の変動を検知して事故防止に役立てている企業もあります。健康意識が高まっている現在、オンラインによる遠隔診療も一般化するのではないでしょうか。
厚生労働省のパンフレットは要チェック
厚生労働省では、テレワークから生じる健康面の課題と解決方法を詳しくパンフレットにまとめています。企業が遵守すべき項目が網羅されていることから、経営者やリーダーは一読すべきです。
参考:厚生労働省サイト
「テレワークのためのメンタルヘルス対策のための手引き」(PDF)
健康に対する意識を全社的に高める
中小企業は社員のひとりひとりの顔が分かる規模であり、経営者と従業員の距離が近く、社長や上司の気遣いが社員に届きやすいことが特長です。ルールや仕組みづくりはもちろん、健康づくりについて日常的に語り合うことからヘルスケアに対する意識が高まります。健康をテーマにした社内コミュニティを作り、経営者やリーダーが率先して健康に関する情報を発信しましょう。
ストレス解消のためにやっている趣味、肩こりが一発でほぐれるストレッチの方法、「1時間に10分歩き回るようにする」などの健康に関する工夫や知恵を交換すると、自然に健康に目が向くようになります。ノートパソコンスタンドやワイヤレスヘッドセットのおすすめ製品、バランスボール、ホットアイマスクなどの健康グッズを話題として取り上げ、会社から支給して使ってもらうなどの活性化も考えられます。
まとめ
テレワークは新しい働き方の大きな主流ですが、従業員に対するストレスや運動不足から健康面の課題が生じやすく、中小企業ではぞれぞれの現場に合わせた対策を考えなければなりません。企業側で管理しなければならないこと、社員のセルフケアが求められること、ルールで解決可能な課題、ITで解決できる課題を分けて解決をはかるべきです。
株式会社ユーネットでは、バーチャルオフィスサービス「oVice」をはじめとして中小企業の快適なテレワークを実現するITによるソリューションについての情報発信や導入に関するご相談を承っております。テレワークに関するお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
KJ@DXコラム編集長
エンジニア出身で現在は現在は営業窓口全般を担当しています。 お客様とのファーストタッチのタイミングからスピーディーに技術的な原因とその対応を行います。 DXの取組に興味を持たれたお客様と一緒になってゴールまで走り抜ける経験を2025年まで培っていきたいと思っています。 このコラムで2025年までの軌跡をお客様と作っていければと思っております
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