2023.04.11
エンジニア内製化のメリットとデメリット。進める際のポイントとは?
ビジネスでIT化が進められるようになってから、日本では多くがITエンジニアをSIerやフリーランス、システムのベンダーから外部委託する形が一般的でした。しかし近年、DX推進などの動きも加速し、エンジニアを内製化する動きが広がっています。
ここでは、エンジニアの内製化とは何か、内製化することでどのようなメリット・デメリットがあるのかを紹介しながら、内製化を構築するためのポイントなどについて解説していきます。
エンジニアの内製化とは?
エンジニアの内製化とは、企業が自らITエンジニアを雇用・育成し、企業のITシステムを自社で開発することをいいます。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の[DX白書2021](https://www.ipa.go.jp/files/000093706.pdf)によると、業務基幹システムなどの開発を内製化している企業は、米国では58.0%なのに対し、日本は31.2%、モバイルアプリケーションなど顧客向けサービスを内製化している企業は米国で60.2%、日本で19.3%となっています。
「ITシステムの開発は専門家に任せる」という風潮があった日本企業ですが、多くの外注事例を経験するなかで、少しずつ内製化に移行する傾向が出てきました。その理由はいくつかあげられます。
内製化が進んでいる理由
エンジニアの内製化が注目される大きな理由は、進化・変化するビジネス市場にスピーディーに対応できることです。
ITやデジタル技術は現在でも加速を続けており、市場で競争力をつけるためには常に最新技術のアップデートが必要です。外注すると、システムの変更や刷新のタイミングを逃したり、スケジュールあわせに時間がかかったりする可能性があります。
社内人材であれば、市場に対応できるシステム変更の対応や、最新技術の導入などの計画を立てやすくなります。
経済産業省の[DXレポート2(中間取りまとめ)](https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-3.pdf#page=18)では、産業変革が加速するなかで、迅速に仮説・検証を立てる必要のあるソフトウェア開発などにおいて、従来のような受発注形態では対応が困難になる可能性があると指摘しています。
特に競争を担う領域のITシステムに関しては、市場の変化をとらえながら、小規模な開発を繰り返すべきだとしています。
エンジニアを内製化するメリット
ITエンジニアの内製化が市場競争に必要であるだけでなく、内製化することによるメリットも享受できます。
コストを削減できる
ITエンジニアの内製化により、外注費がかからなくなるため開発にかかるトータルコストの削減が見込めます。
外注を継続していると、依存度が高くなるため価格交渉で強く出られなくなり、更新のたびに外注費が割高になっているケースもあります。また依頼したシステムが考えていたものと異なる、納得のいくものではなかった、などの問題が発生すると、金銭的・時間的コストも大きくなってしまいます。
ほかにも外注費だけでなく、外部とのコミュニケーションコストなども発生するため、結果的に全工程にかかる経費やリスクが抑えられるのです。
スムーズな業務対応ができる
内製化は、外部委託先とのやりとりがなくなるため、開発スピードを上げることが可能で、スケジュールの調整や急な要求の対応も容易になります。また運用中も、システム障害などのトラブルが発生した場合、外部委託先に連絡、状況の説明、対策の話し合いなどに時間をかける必要がなくなりスピーディーに処理できる可能性が高くなります。
社内のシステムを理解し、職場の状況を把握しているITエンジニアが在中していればこそのメリットといえるでしょう。
システム開発のノウハウを蓄積できる
システム開発を内製化することで、社内開発の体験・実績から得られる独自のノウハウを蓄積することができます。外部委託の場合、ノウハウは残らず情報は流出してしまいますが、内製化・マニュアル化することでこれらが貴重な経営資源となり、企業の知的財産として残すことができるのです。
エンジニアを内製化するデメリット
一方で内製化は、メリットだけではありません。内製化に伴うデメリットも把握しておきましょう。
コストがかかる部分もある
外注費用などがかからない一方で、システム開発にかかる設備や備品、また開発後も運用していくための費用がかかります。IT人材の雇用、育成など人件費も大きくなります。
SIerやフリーランスなどの外部委託は、費用対効果を意識しますが、内製化すると人件費を含めコストのかかり方が変わってくるため、意識しにくくなる傾向にあります。全体の費用対効果を見える化し、分析していくことが大切です。
品質管理が安定しない場合もある
外部委託の場合、即戦力となる専門家が対応するため、その技術や開発したシステムの品質は高いものと考えられますが、IT人材を雇用・育成している間は、技術や知識などが不足し、品質が安定しない可能性があります。
内製化は、長期的な目線で構築していく必要があるため、そのための時間や投資に余裕を持って取り組むことが求められるでしょう。
人材確保が難しい
多くの企業で課題となっているのが、人材の確保です。内製化を成功させるためには、IT人材の力が欠かせませんが、日本ではIT人材が不足しており、メンバーを集めるのは簡単なことではありません。
経済産業省の[IT 人材需給に関する調査](https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf)による試算では、IT人材不足は年々増加の傾向にあり、2030年には中位シナリオで45万人、高位シナリオでは79万人の不足となるとしています。
エンジニア内製化のポイント
エンジニアの内製化を検討する場合、体制を構築するためどのような点に注意すべきでしょうか。
内製化する部分が社内の主力業務であるか
まず、内製化する部分が企業の中核的・主力の事業であるのか、成長が見込める事業であるのかを明らかにすることが大切です。システム開発という事業が自社にとって必要であるのか、また適切であることをしっかりと見極めた上で取り組みましょう。
リソースの確保が可能か
内製化では、IT人材の確保が必要で、IT人材を採用できる環境を整えることも重要な要素です。IT人材を雇用できる環境や資金がない場合、そもそもノウハウがない場合は、フリーランスやITコンサルタントなどを活用し、少しずつ体制を整えていきましょう。
人材の育成
内製化は、システム開発ができる体制づくりです。雇用するだけでなく、IT人材が継続して働ける設備や環境の整備、人材教育、育成なども必要不可欠になります。
ツールを活用する
近年は、ノーコード開発・ローコード開発できるツールも存在します。用意されたテンプレートやパーツを組み合わせることで最小限のプログラミングコード、あるいはコードを全く使わずに開発する方法です。
直観的な操作で扱いやすく、短期間で開発できるのが特徴です。非ITエンジニアでも取り組みやすく、実践のハードルを下げることができるため、内製化の第一歩として活用してみるのもおすすめです。
まとめ
前述した「IT 人材需給に関する調査」では、IT需要の伸びを中位シナリオで考え、生産性上昇率を3.54%で試算した場合、2030年時点でのIT人材の需要と供給のギャップが0になるとも報告しています。
ITエンジニアを内製化し、生産性を上げていくことは将来的に企業の成長や市場競争に関わる重要なポイントとなるでしょう。
とはいえ、初めから体制を整え内製化を実現するのは困難であり、IT専門家の視点からのサポートも必要です。信頼できるITパートナーを見つけ、内製化に向けた事業の取り組みができるように相談していくことをおすすめします。
(画像は写真ACより)
この記事を書いた人
KJ@DXコラム編集長
エンジニア出身で現在は現在は営業窓口全般を担当しています。 お客様とのファーストタッチのタイミングからスピーディーに技術的な原因とその対応を行います。 DXの取組に興味を持たれたお客様と一緒になってゴールまで走り抜ける経験を2025年まで培っていきたいと思っています。 このコラムで2025年までの軌跡をお客様と作っていければと思っております
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